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未来について話そう

編集長通信 4/1



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宝島AGES vol.2』にインタビュー記事が掲載されました。許可を得て、この「編集長通信」へ転載することにしました。一読いただけましたら嬉しいです。

『THE FUTURE TIMES』に関するインタビューはいろいろなところで受けていますが、まだまだ、どういう経緯で立ち上げたモノなのか上手に説明できている実感がありません。


これまでの「ミュージシャンは政治性を持つべきではない」という言説がまだまだいろいろなところで抑圧的に働いて、とにかく誤解を受けることが多いというのも、正直なところです。

とはいえ、このくらいの社会活動/参加が過剰な政治性だと捉えられてしまう社会は、とても遅れているとも感じます。僕が仲間たちとやっているようなことが、とりわけ特別ではなくなるようになって欲しいし、そうなろうとしていると感じます。いろいろな人たちが、それぞれの場所で様々な活動していますから。市民の社会参加というのは、これからの日本のテーマではないでしょうか。随分とドライに過ごしてきた数十年がありますから。

以下の記事を転載させてくださいました『宝島AGES』の編集部の皆様に感謝します。紙面でも特集されていますので、機会があったら手にとってみてください。



 ーーTHE FUTURE TIMESを創刊した動機を教えてください。

東日本大震災の直後、「何か役に立ちたい」という思いをどうやって形にしたらいいのか、とても迷いました。義援金をいくら送っても、どうにも手応えがなくて途方に暮れました。そういった経験の中で、ふと、寄付できるのはお金だけではないと思ったんですね。例えば、ボランティアの人たちは「行動」や「時間」を社会に寄付している。それならば、僕もお金以外の何かを社会に寄付したいと考えました。

それともうひとつ、デモ行進以外にデモはないんだろうか、という思いも新聞作りのきっかけになっています。様々な問題について声を上げたいけれども、当時はいわゆるデモに対する偏見が今よりも存在していたように思います。そういった状況の中で、どうやって声を上げるのがいいのかを考えていました。ヒントになったのは音楽史です。中世ヨーロッパの吟遊詩人たちは、荘園や国々を渡り歩いて様々な情報を伝達する、新聞のような役割を担っていました。彼らを僕らのようなポピュラー音楽のミュージシャンの先祖と考えることもできます。その役割をそっくり現代に復活させてしまおうと思ったんですね。元来持っていた役割というのは、今の僕らにもどこかしら引き継がれているはずですから、無理なく役割を再現できるのではないかと考えたのです。

そういう流れから、THE FUTURE TIMESの創刊を思いつきました。


ーー数あるメディアの中からフリーペーパーという形態を選んだ理由はありますか?

無料であることには、とても意味があります。現代では、ほとんどのものが貨幣で価値を計られてしまいます。等価交換は僕らの暮らしの利便性を上げてくれましたけれど、どこかで歪さも抱えています。お金を支払った側が、対価としてのサービスを過剰に要求するような風潮も、最近では強く感じます。そういうなかで、無料であること、営利目的でないことは、ひとつのバグのようなかたちで、面白い作用があるのではないかと考えました。

そして、創刊の理念である「行動を寄付する」から考えて、無料であることが相応しいと考えました。


ーーTHE FUTURE TIMESは広告もなければ、お金をとっているわけでもありません。どうやって成り立たせているのでしょうか? また、そのスタイルに至った後藤さんの考えをお聞かせください。

弾き語りイベントなどを行い、レコードやTシャツなど、物販での売上げを取材費や印刷費に回しています。イベントでは購入していただいたグッズになるべくサインをするようにしています。これは参加してくださる方への感謝でもありますし、想いを手渡しするような感覚を大事にしたいからです。売上げは預かったお金だと考えていますから、彼らと直接対面することで、自分の心も引き締まります。

それでも足りない分に関しては…、まあ、なんとかなるものです。


ーー後藤さん自ら福島で取材もされていますが、取材をとおして、報道と現実の違いを感じたことはありますか? 

報道と比較するのはとても難しいですね。マスメディアというのは、とにかく膨大な情報を扱っています。だから、広範囲で網羅的な反面、ニュースが消費されるのも早いように思います。

その点、僕らの取材力には限界がありますから、マスメディアのようなやり方はできないんです。その変わり、同じところに何度も行くとか、そういった継続性によって記事の内容が立体化すると考えています。パッと現場だけ切り取るというよりは時間軸で捉えていくことで、報道とは違った何かを伝えることができたらと思います。

そういう意味では、「福島」とまとめるには、あまりにも福島県は大きいし、あまりにも多くのひとが、それぞれの人生を歩んでいるという当たり前の事実に、目を向けて欲しいと取材を通して思いました。


ーー震災前から原発問題などに関心があったそうですが、THE FUTURE TIMESは、例えば「原発反対」や「脱原発」というメッセージよりも「新しいエネルギーの可能性」「新しい生活のカタチ」をひたすら探るという姿勢を貫いています。その理由は何ですか?

より良い社会を求めるために、反対の意思を表明することはとても大切です。ですが、もう少しスマートな方法を考えたかったのです。何より、自分自身が将来に希望を持てるような情報を掲載したかったんです。そうすると、やはり「こんな面白いアイデアがあるんだよ」という記事作りのほうが、単純にワクワクするんですね。ある種の深刻さを演出するよりも、こんなにも可能性があるんだ!と感じながら、暮らしていきたい。ただそれだけです。


ーー「これからの農業」や「これからの暮らし方」など具体的な未来像も提案されるようになってきました。そこに至った理由はありますか?

単純に、日本中でユニークなことを始めている人たちがたくさんいるんですね。そういう人たちがそこら中でガシガシと暮らし方を開拓している。そういった動きに感化されているのだと思います。そういう人たちのユニークさを横流ししていけば受け取った人たちも開拓を始める。そうやって社会は豊かになっていくのではないだろうかと考えています。

あとはもう、当たり前のことですが、僕らの生活が変わらなければ、社会は変わらないですから。個人の集積が社会である以上、それは自明です。例えば、地産地消がブームになれば、消費者が望めば、第一次産業も流通産業も変化します。だから「暮らし」は大きなテーマだと考えています。


ーー具体的な未来像の提案と同時に、共通したテーマを設けるのではなく、毎回、違うアプローチから未来についての話や考え方を、いろんな人に聞きに行って、対談記事として掲載していますが、今まで登場された方の話でとくに印象に残っている対談はありますか? 対談は毎回、刺激になっていますか?

対談はとても大きな刺激になっています。すべての対談が印象深いですね。発見の連続です。


ーー途方もなく思えるテーマを身近なところに引き寄せよるのは大変な作業だと思いますが、何をどう扱うかというのはどのような過程で決めているのですか? 侃々諤々の編集会議があるのでしょうか? それとも後藤さんの頭のなかで出来上がっていくのでしょうか? そのプロセスを教えてください。

編集を手伝ってくれている仲間たちと会議を重ねて、毎号の内容を決めています。僕が最初に提示する興味が方向性を決めますけれども、その枝葉の部分について、仲間たちの助言は大きな助けになっています。そして仲間たちの興味も、紙面にはとても大きく影響しています。


ーーTHE FUTURE TIMESをつくっていくなかで、一番苦労することは何でしょうか? 持続する意思の力なのでしょうか? 経済的なことでしょうか? 時間的なことでしょうか?

それぞれにTHE FUTURE TIMES以外の仕事を抱えていることです。本業の合間を縫って取り組んでいることですから、やはり時間的な制約をクリアすることが、もっとも苦労している部分だと思います。


ーー世の中は少しずつでも変わっているという手応えはありますか?

僕が新聞を出す前と、出した後では、THE FUTURE TIMESが存在するという点で明らかな違いがあります。大きな手応えはありませんが、そういった事実は案外強く背中を押してくれます。手にしてくれた人たちがいるということが、ささやかな変化の証だと思っています。

実際、僕の音楽を知らないお爺さんから、感想をいただいたことがあります。そういったある種の越境が起きていることには喜びを感じています。


ーー今後、どのようなことを記事にしていきたいですか? 次号でやりたいことはありますか?

被災地の状況については、継続的に追いかけていきたいと思っています。


ーーミュージシャンとしての活動(曲作り、レコーディング、ライブ、ソロ活動)とTHE FUTURE TIMES編集長としてのバランスはどうとっているのでしょう? つねに同時にあり、アウトプットが違うという感じなのでしょうか?

それぞれにアウトプットのチャンネルが違うようにも感じますが、その源泉は僕なわけですから、特にバランスを取ろうと意識してはいません。僕の内面から湧き出している意欲が原動力となって取り組んでいるうちは、そのどれもが分離せずに、僕の体の中でちゃんと繋がっていますから。無理に分けなくてもいいんです。

質問者:森内淳 高田秀之(『宝島AGES』)


2015年04月02日

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