ctds
ctds
ctds

ふるさと復興会議

南相馬市の復興に向けて市民が必要としている新しいネットワーク

img01

 福島第一原発から海沿いを北へ。浜通り地方の北東部に位置し、豊かな自然と温暖な気候、野馬追や化石発掘などの観光資源に恵まれた町、南相馬市。この地域の復興に向けての道のりは平坦ではない。地域住民、移住者、ボランティアなどの有志によって開催された『第二回 ふるさと復興会議』でも、様々な意見が参加者達から述べられ、改めて、震災による被害の甚大さ、原発事故が生んだ分断や軋轢について考えさせられた。

 現在、南相馬市では医療関係や役所などの公的機関で人員が不足している。原発事故の影響によって交通インフラが寸断されてしまったことが、復興に向けた様々な活動の足かせとなっている。それに加えて、放射能汚染が人口の流出や教育の問題を生じさせている。実害と風評によって、農業や漁業といった一次産業の受けたダメージも大きい。

 会議は、「除染なくして福島の復興はなし」という、ふるさと回帰支援センター会長の言葉からスタートした。テレビメディアは連日、政府が進める除染関連のニュースを放映している。だが、この〝除染〟にも様々な問題が噴出している。地域によっては方法が定まらず、作業によって剥がされた表土などの仮置き場がない。数カ月で数値がもとに戻ること、除染作業が新たなホットスポットを生んでしまうことなど、その効果を疑問視する声も上がっている。地元ではなく、大手企業に利益が集中するシステムへの不満も多い。何より、農業や林業に従事する人達は、その膨大な面積についての心配を口にする。そして、山野や住宅街を洗浄しても、放射能が流れ着いた先の河川や河口、海の汚染が漁業にダメージをあたえることは想像に難しくない。一縷の望みであるはずの〝除染〟に対する想いも、決してひとつではない。それでも、野田首相による原発事故〝収束〟宣言については、参加者は一様に疑問の態度を示していた。〝収束〟どころか、南相馬市の復興は手探りで始まったばかりなのだ。その想いは、濃淡の差こそあっても、参加者によって共有されていた。

 会議では、国や地方自治体によって明確な方針が打ち出されることへの期待や、東京電力からの保障を求める声もあるなか、「そのような他力本願な言葉を並べるだけでは復興会議をやっても仕方ない」という意見が参加者から述べられたのが印象的だった。「余力のある農家こそ別の場所で農業を再開することも必要だ」という意見にも驚いた。子供達の〝他県への留学〟についての声もあがった。

 たったひとつの方法へ集約するために、この『ふるさと復興会議』は行われているのではない。『絆』などという漢字一文字では表せない問題の複雑さや大きさと最前線で向き合い、復興に向けて、お互いを尊重し合うための集いなのだと感じた。彼らが必要としているのは新しいネットワークであり、そこから生まれる新しいアイデアなのだ。

 震災直後から、救援物資や交通アクセスなど、物理的な面でも苦境に立たされた南相馬市。そして、現在、有志たちが紡ぎあげようとしている、新しい人と人との繋がり。それは震災以前から分断されていた、我々の生活や社会を再構築させるためのヒントや、新しいモデルになるかもしれない。そんな予感を孕んでいた。

 門戸は開放されている。この地に集められるべきものは、無神経で差別的な言葉ではない。復興へ向けての様々な知識と技術こそ、日本中から集められるべきなのだ。

img002

(2012.5.2)