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未来について話そう

THE FUTURE TIMES 7号の発行に寄せて


TFTvol7_hyo1_s.jpg 『THE FUTURE TIMES』 7号が完成しました。特集記事は「暮らし方で社会を変える」です。

 2011年。東日本大震災の直後、僕は普段使っている駅の暗さに驚きました。計画停電で列車の運行本数が制限されるなか、駅の照明も間引かれ、電灯がないとここまで暗くなってしまうのかと率直に感じたのです。また、たとえばエスカレーターの手すりに沿って隙間なく設置された蛍光灯などに違和感を覚えました。僕たちは、必要以上の電気を使うための建物を建て続けてきたのだとも思いました。

 そこで興味が湧いたのが建築物や街でした。そもそも建物が、僕たちをエネルギー漬けにしているのではないか、そんな問いが立ち上がりました。そして、いつかそういった問題について、建築家たちにインタビューしてみたい。そんなアイデアをずっと温めていました。

 ただ、それをそのまま記事としてまとめるには、テーマが大き過ぎるとも思いました。「では、すべての建物を建てかえます」というようにはいかない。一つひとつの建物が集合した街となると、その成り立ちはとても複雑ですから、「社会は変わるのか
」という問いは、宛てどころのない手紙みたいなものになってしまうだろうと思いました。あるいは的のが大きいけれど、どこを撃っても点数の低い射的ゲームのようだとも。

 それでも相変わらず、建物は僕たちの生活をコントロールしています。もちろん僕たちは壁を突き抜けることはできませんから、身体の動きは制限されるわけです。建物や街は構造的に強い。そういうことに抗うにはどうしたらいいのかをずっと考えていました。そして、強固な何かに立ち向かうのではなくて、僕たちの「身体の使い方=暮らし方」を変えてゆくのがいいのではないか、そんなように問いは反転して行きました。

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 前置きが長くなりましたが、今回の「暮らし方で社会を変える」は、そんな特集記事です。街を変えるのではなくて、僕たちが変わること。制度の変革ありきではなくて、僕たちがどう変えたいと思っているのかということ。街や建物や制度の問題を取り上げるのではなく、僕ら自身の有り様についてを問い直す特集です。

 建築家の藤村龍至さんには埼玉県鶴ケ島市とさいたま市のプロジェクトを通して、公共建築や行政への市民参加の可能性についてうかがいました。建築と民主主義。一見関係のないものが見事に繋がります。

 岩手県の紫波町では、行政と民間の力で、補助金に頼らない新しい町づくりが進んでいます。地元・紫波町の木材を使ったエコハウスと地域熱共有について、同じく建築家の竹内昌義さんに解説いただきました。

 札幌では「暮らしかた冒険家」を標榜するご夫妻を取材。僕らがどうやって暮らし方を変えて行けばいいのか、実践へのヒントがたくさんありました。

 いとうせいこうさんの「あっちこっちと未来」は今回で三回目。7号では『トビムシ』の竹本さんと共に、日本の森林の豊かさと明るい未来について語っていただきました。また、エネルギー自給率100%を目指す岐阜県高山市の國島市長にもお話をうかがいました。

 そして、今号から憲法の特集もスタートします。初回は「憲法と民主主義」と題して、憲法学者の木村草太さんに、憲法とは何かという基礎的なことや、従来の護憲/改憲論とは違った角度から、僕たちに求められる “市民としての成熟” について語っていただきました。

『THE FUTURE TIMES』7号は12月2日から配布されます。配布先については、トップページからのリンクに配布先の一覧がありますので、そちらを参照ください。

 この新聞は無料です。有志たちが集まって、時間や労力を投げ出すようにして制作しています。僕たちはこの新聞作りを、社会への寄付だと考えているんですね。お金だけではなくて、行動だって寄付できるんだということを実践しているつもりです。

 自費での制作ですから、ボタンひとつでお届けすることはできません。どうか街に出て、手にしてみて下さい。僕らにとっては、読んで下さる皆さんが、この新聞を探して街に出ることが、すでに、ほんの少しの変化なんだと考えています。

「暮らし方で社会を変える」手に取って読んでいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。 Web版も随時アップしていく予定です。

2014年11月09日