震災から3年が経ちました。
あっと言う間の3年だったようにも思えますが、一方で、長い長いトンネルに入ったかのように、ずっと風景の変わらない車窓を眺めているような気分にもなります。そして、それでも強かに、いわゆる「東京」的なものがずんずんと進んでいて(その象徴はオリンピックなのかもしれません)、それを「復興」とは思えずに置いていかれてしまうような感覚もあります。
思い起こせば、震災後間もない時期に放送した『THE FUTURE TIMES RADIO』。放送は六本木ヒルズにあるJ-WAVEのスタジオから行いました。番組のオープニングでは六本木の交差点に出て、人気がなく薄暗い繁華街の様子をレポートしたように記憶しています。
あれから3年。六本木の街は何ごともなかったかのように、煌々と輝いています。ネオンもイルミネーションも元通り。まるで計画停電のことも忘れてしまったかのように。
「復興」とは一体どういうことなんでしょうか。
THE FUTURE TIMES 6号の特集は「三年後の現在地」です。
岩手県陸前高田市からは海に戻ることを選んだ漁師たちの覚悟と再生を、福島第一原発から3kmの双葉郡大熊町で行方不明の娘を捜索し続ける父親と仲間たちのレポートを、双葉郡富岡町では重苦しい現状とささやかな兆しについてのルポルタージュを、宮城県南三陸町ではある学習施設と子供たちの未来についてを、それぞれ記事にまとめました。震災や復興のすべてをフォローアップしたものではありませんが、それぞれに広がる風景から、想像の射程を拡げてもらえたらと願います。
そして、岩手県の大船渡では『ライブハウス大作戦』を取材しました。震災直後は不謹慎だとされた音楽にまつわるあれこれ。僕も含めて、ミュージシャンたちは思うところがたくさんあったと思います。音楽にできることは何なのか。その答えではないかもしれませんが、いろいろなヒントがこの活動には詰まっています。ジャンルや文化を越えて、『ライブハウス大作戦』がひとつの交流と出会いの「場」になっているのです。そんなことについての対談記事です。もちろん、継続することの重要性についても語られています。
そして恒例のインタビューでは、画家・彫刻家の奈良美智さん、ミュージシャンの畠山美由紀さん、詩人の和合亮一さん、ロックバンド THE BACK HORNの松田晋二さんという東北出身の4名に未来についてそれぞれ語っていただきました。
前を向いて進んでいくことももちろん大切です。けれども、そのスピードについて僕は問いたい。誰かを、何かを、置いてけぼりにしてしまうような速度で僕たちは進んでいるのではないか。
一度立ち止まって、これまでの3年のことを振り返りながら、これからについてもう一度考えるような、そんな紙面になりました。手に取っていただけたら嬉しいです。
Web版も紙面とは違うバージョンの記事を随時アップしていきますので、よろしくお願いします。