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未来について話そう

編集長通信 11/30

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 創刊号が完成しました。テーマは「住まう」。住むこと、住み続けること、現代の我々が直面しているとても大きな問題について、真っさらな気持ちで考え直したい、そんな想いで編集部一同、取材/記事制作に取り組みました。

 津波の被害だけではなく、原発事故の影響がとても重くのしかかっていることは、誰の目にも確かなことだと思います。アンタッチャブルな地域を空洞のように生じさせてしまったことで、原子力発電所近辺だけでなく東北全体の沿岸部の復興へ歩幅に影響が出ていることを感じます。あの事故さえなければという思いが、多くの人の胸に、今でも強くあります。

 そういう厳しい現実の中でも、ささやかな希望の芽がいろいろな場所で地表に顔を出し始めています。The Future Times創刊号では、そういったいくつかの希望を記事にできたと思います。

 一方で、代弁のできない言葉も集めることにしました。多くのメディアで、様々な角度から集められていることは知っていましたが、我々も独自の視点で福島県の人々のインタビューを行いました。とても複雑で、いびつな構造によって、彼らだけがその重荷を背負わされているように私は感じます。この問題は、すべての人が当事者になるべき事柄です。他人事ではありません。福島の人たちだけに差別的な感情を投げつけずに、強い気持ちで解決していかなければならない問題です。

 創刊号は、創刊準備号の倍、28ページの分厚い記事になりました。かなり読み応えがあると思います。少しでも、皆さんが何かを考える役にたってくれれば幸いです。そして、それを自分の身の回りにフィードバックして下さい。そして、ゆくゆくは我々の場所までエネルギーを戻して下さい。我々も、新聞を作ることで学び、皆さんの返してくれたエネルギーからも学び、進んでいきたいと思っています。

 夜明けはまだまだ先です。我々は、はっきりと闇の中にいます。ただ、弱いひかりがそこかしこに灯っています。そのひかり達を、今後も取材し続けたいと思います。同時に、闇の深さについても考え続けたい。

 創刊号が皆さんの手元に届くことを願っています。また、このWEB版も紙面とは違うインターネットの特性を利用して、ますます充実させていきますので、よろしくお願いします。



2011年11月29日

編集長通信11/02


kn01.jpg 弾き語りライブで訪れた宮城県の気仙沼。震災直後の状況から比べれば、かなり片付いているという話を伺った。それでも私の目には復興への歩みがここにきて停滞しているようにも映ります。自治体の想い描くビジョン、それぞれ住民たちの想い、いろいろな問題もあることだろうと想像します。ただ、それにしても、津波で被害を受けた沿岸部への公的な支援の速度が遅すぎはしないかと、被災地に行く度にやきもきとした気分になります。同時に、その被害面積の大きさに途方にくれてしまいます。ミュージシャンがいくら慰問に訪れようと、決して動かせないことだけが転がっています。

 併せて放射能の問題も私たちは抱えています。瓦礫の処理についても、放射能の問題はついてまわります。原発事故と津波による被害のことを切り離して考えてしまいがちですが、復興に向けた様々な活動は、原発の事故さえなければ現状の何倍ものスピードで進んでいたはずです。それもまた、とてももどかしい。

 物理的なことや経済的なことも含めて、僕たちは「住む」ということをもう一度考えなければいけない時代になったのだと思います。それぞれが、それぞれの自由と責任で住む場所を選び直さなければならない。もちろん、「想い」のようなもの、ときには柵のような事柄とも向き合う必要があるのだと思います。そのうえで、選ばなければならない。これは東北だけでも、東日本だけもなく、日本人全体の問題になったのです。


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「選ぶ」ということはとても大切な行為です。同時に権利でもあります。僕らが買う商品の選択ひとつをとっても、その集積が「社会」です。極端な例を出せば、消費者のすべてが断固として有機栽培の野菜を選べば、野菜売り場には有機野菜だけが並ぶようになります。ある程度の数が集まった場合の消費者の選択というのは強いのです。だから、僕たち一人ひとりが何をどんな考えを持って選ぶかはとても重要です。むしろ、それ以外の方法で社会が変わることはないと私は考えます。

 私たちは、精神風景としての、現在という荒野に何を建てるのか、真剣に考える必要があります。そして、行動に移す必要があります。これは大きなことではなくて、私たちのささやかな生活の中にある選択すべての積み重ねなのです。

 そんなことを考えながら、創刊号の編集に取り組んでいます。
2011年11月02日