紙面とはボリュームを変更して、株式会社スマイルズ代表取締役の遠山正道さん、建築家の谷尻誠さん、それぞれの記事をアップしました。反響も沢山頂いて嬉しい限りです。
遠山さんの視点は、経営者ならではなものであるのと同時に、クリエイターとしての気質をとても感じる内容でした。語られる言葉の内容以上に、人間そのものから溢れるエネルギーを実際にお会いして感じました。もしかしたら、こういう類いの時代を切り開いていくようなエネルギーは、僕たち30代前半の世代には欠けているのかもしれません。エネルギーがあったとしても、内向き、自分に向かってしまっているような...。それを“ときめき”という言葉が代表するような楽しさやクエイティブな事柄に向けて行くこと。表に発散していくこと。そして、そのエネルギーでもって多くのジャンルを横断していくこと。それを起業家として社会と結びつけている遠山さん、“格好良い大人だな”と思いました。
そして、谷尻誠さんの記事。
「紙面と比べてボリュームが大幅に違うではないか」というツッコミを頂くほどの拡大版記事です。でも、そのツッコミは僕は間違いだと思うのです。なぜなら、WEBの利点はそこですから。ほぼノーカットでインタビューを掲載することが出来るということ。そして即時性があり、随時変更が可能なことが利点です。ですので、The Future Timesでは、今後もWEB版と紙面ではボリュームに差があります。メディアとしての特性が違うのだから、内容が違って当然ではないかと、考えています。
紙では“編集すること”ということにも焦点をあてています。WEBではノーカット掲載が可能な記事を、紙という制限のある場所で、どのように編集するのか。それは強い言葉を選び出すということだと思っています。普段なにげなく接している雑誌などのメディアにおける“編集”という行為、実はとてもクリエイティブな行為なのだと僕は思っています。そこには作家性が確実に存在します。
記事の対談とは別に、先日、谷尻さんのオフィスにあるスペースにて不定期で行われているトークイベント『THINK_05』に参加させていただきました。記事中にもあります、敢えて名前を特に決めていないという事務所3Fのスペースです。お茶を飲めばカフェにもなるし、写真展を行えばギャラリーにもなるというこの場所。名前を付けないことで広がる可能性、これはとてもおもしろい考え方だなと感動しました。
当日はUSTにて、トークの模様を配信。トーク後は集まってくれた皆様の前で数曲歌わせて頂きました。歌を歌えば、ライブハウスになるというのも、このスペースの面白いところです。
このThe Future Timesという新聞についても、日々、いろいろ考えています。とくに着地点を考えずに、ぐるぐるといろいろな思考回路を巡っています。紙であることの意味や、WEBで出来ることについて、メディアについて、編集することについて、ミュージシャンなのにどうしてこのような活動をしているかについて、そして箇条書きに出来ない本当に些細な思考の断片を積み重ねては掃き散らし、掻き集めなおす毎日です。
特に紙という肉体性を情報が持つことの意味については創刊準備号以前から考え続けていることではありますが、実際に行ってみての実感から学習させてもらっています。例えば、実体があることで、思わぬ広がりを見せることがあること、それはカフェの机の上で、あるいはどこかのオフィスの休憩所で、誰かが置き忘れたベンチの上で。欲しいと思っていないひとが不意に手に取ること、これは紙の面白さです。
逆にWEBには、好きなものを自分で探して集めるという行為にとっての利便性があります。ただし、欲しいものしか手にしないような、入り口が狭いタコ壷のような、そういう世界にどっぷりと浸かってしまう危険性もあります。雑誌などの良いところは、興味のない情報も一緒に載っていることなのではないかと、そんなふうに感じています。
僕はミュージシャンとして、この紙についての話しは、CDやレコードについて考えることとも繋がっているのだと思っています。新聞を作ることを通して、いろいろな物事が、ただそのたったひとつのことのためには存在していないことを実感しています。Aということを考えるのは、BやCや、果てはZを考えることと具体的な区別はあっても奥の奥で繋がっていると、そう感じます。
『THINK』
考え続けたいと思います。