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未来について話そう

編集長通信 8/16


 紙面とはボリュームを変更して、株式会社スマイルズ代表取締役の遠山正道さん、建築家の谷尻誠さん、それぞれの記事をアップしました。反響も沢山頂いて嬉しい限りです。

 遠山さんの視点は、経営者ならではなものであるのと同時に、クリエイターとしての気質をとても感じる内容でした。語られる言葉の内容以上に、人間そのものから溢れるエネルギーを実際にお会いして感じました。もしかしたら、こういう類いの時代を切り開いていくようなエネルギーは、僕たち30代前半の世代には欠けているのかもしれません。エネルギーがあったとしても、内向き、自分に向かってしまっているような...。それを“ときめき”という言葉が代表するような楽しさやクエイティブな事柄に向けて行くこと。表に発散していくこと。そして、そのエネルギーでもって多くのジャンルを横断していくこと。それを起業家として社会と結びつけている遠山さん、“格好良い大人だな”と思いました。


 そして、谷尻誠さんの記事。

 「紙面と比べてボリュームが大幅に違うではないか」というツッコミを頂くほどの拡大版記事です。でも、そのツッコミは僕は間違いだと思うのです。なぜなら、WEBの利点はそこですから。ほぼノーカットでインタビューを掲載することが出来るということ。そして即時性があり、随時変更が可能なことが利点です。ですので、The Future Timesでは、今後もWEB版と紙面ではボリュームに差があります。メディアとしての特性が違うのだから、内容が違って当然ではないかと、考えています。

 紙では“編集すること”ということにも焦点をあてています。WEBではノーカット掲載が可能な記事を、紙という制限のある場所で、どのように編集するのか。それは強い言葉を選び出すということだと思っています。普段なにげなく接している雑誌などのメディアにおける“編集”という行為、実はとてもクリエイティブな行為なのだと僕は思っています。そこには作家性が確実に存在します。


th02.jpg 記事の対談とは別に、先日、谷尻さんのオフィスにあるスペースにて不定期で行われているトークイベント『THINK_05』に参加させていただきました。記事中にもあります、敢えて名前を特に決めていないという事務所3Fのスペースです。お茶を飲めばカフェにもなるし、写真展を行えばギャラリーにもなるというこの場所。名前を付けないことで広がる可能性、これはとてもおもしろい考え方だなと感動しました。


 当日はUSTにて、トークの模様を配信。トーク後は集まってくれた皆様の前で数曲歌わせて頂きました。歌を歌えば、ライブハウスになるというのも、このスペースの面白いところです。

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 このThe Future Timesという新聞についても、日々、いろいろ考えています。とくに着地点を考えずに、ぐるぐるといろいろな思考回路を巡っています。紙であることの意味や、WEBで出来ることについて、メディアについて、編集することについて、ミュージシャンなのにどうしてこのような活動をしているかについて、そして箇条書きに出来ない本当に些細な思考の断片を積み重ねては掃き散らし、掻き集めなおす毎日です。

 特に紙という肉体性を情報が持つことの意味については創刊準備号以前から考え続けていることではありますが、実際に行ってみての実感から学習させてもらっています。例えば、実体があることで、思わぬ広がりを見せることがあること、それはカフェの机の上で、あるいはどこかのオフィスの休憩所で、誰かが置き忘れたベンチの上で。欲しいと思っていないひとが不意に手に取ること、これは紙の面白さです。

 逆にWEBには、好きなものを自分で探して集めるという行為にとっての利便性があります。ただし、欲しいものしか手にしないような、入り口が狭いタコ壷のような、そういう世界にどっぷりと浸かってしまう危険性もあります。雑誌などの良いところは、興味のない情報も一緒に載っていることなのではないかと、そんなふうに感じています。

 僕はミュージシャンとして、この紙についての話しは、CDやレコードについて考えることとも繋がっているのだと思っています。新聞を作ることを通して、いろいろな物事が、ただそのたったひとつのことのためには存在していないことを実感しています。Aということを考えるのは、BやCや、果てはZを考えることと具体的な区別はあっても奥の奥で繋がっていると、そう感じます。

『THINK』

考え続けたいと思います。

2011年08月16日

編集長通信 8/1


 more treesと岩手県の住田町が行う被災地支援『LIFE311』が、地元の木を使った木造の仮設住宅を展示するということで、六本木ヒルズの特設会場を見学してきました。


IMG_0764.jpg 住田町では震災前から、木造の仮設住宅の図面の用意を進めていたそうです。それは今回の震災を予想してのものではなく、日本中のどこかで、いざというときにこのような仮設住宅が必要になるのではないかと。その場合、簡単に組み上げたり分解でき、かつ、ストックしておけることが出来たら良いのではないか、と。

 その図面をもとに改良したのが、写真の仮設住宅です。4畳半×2部屋と、キッチン、浴室、という間取り。あくまでも仮の住居ということが目的ですが、木の良い香りがして、想像以上にしっかりとした構造でした。エアコンや冷蔵庫、洗濯機も設置可能。東京の狭いアパートに比べたら、お風呂が広いようにも思いました。私が学生時代に住んでいたアパートより広いくらいです。


 The Future Timesでは、詳しく取材しようと計画中です。林業の話、雇用の話、エネルギーの話、仮設住宅の話、震災の話、いろいろな話題や問題がマーブル模様に混ざり合った記事が作れるのではないかと思います。

 “未来ついて話そう”というテーマでいろいろなひとに会いに行くと、実はみなさん、過去のことも話してくれます。漠然と未来が描けたりはしないのだということも、最近は感じています。過去のこと、現在を積み重ねること、それが結果的に未来を作りあげるのではないかと、そういう視点にアップデートされます。やはり、僕自身が、この新聞を作ることによって、いろいろなことを考えているのだということを実感します。視野を広げるために作っているのだということ。


 仮設住宅の壁に掛けられていた1枚の写真。陸前高田市を空から撮影した写真です。

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 最近では、被災地の模様が頻繁に取り上げられるようなことはなくなりましたが、現地では、市内から集められた瓦礫が、複数の場所に積み上げられたままなのだそうです。そして、撤去に17億円ほどかかると言われている半壊した建物が、ほぼそのままの形で残っているとのこと。民間の力だけではどうにもならないことは、目に見えているのではないでしょうか。

 こういう現実にも目を背けずに、むしろ注視して、刮目して、未来のことを考えて行きたいです。原発やエネルギーの問題ばかりを気にかけて、こういう場所が日本にはまだあることを忘れないでいたいです。


2011年08月01日