後藤「これからどうですか、物資とか、例えば今日のようなイベントに参加しているひとが支援に協力したい場合っていうのは、どうしたらいいんですか。どういうモノが必要なのか」
KO「僕はSLANGというバンドをやっていて、ライブをするときに各地で物資を集めたりするんですけど、カウンターアクション(※11)では365日レトルト食品を受付しているので、ちょっと札幌の街に来るついでにレトルト1個とか持ってきてもらえれば。あと、各自で送ってもらうようにしていて。俺のブログに物資支援の詳細が書いてあって、それをTwitterで拡散して、そこから俺にメールをもらうみたいな」
後藤「一方で、皆がKOさんに全部頼るんじゃなくて、それぞれが自分のコミュニティに話を持ってかえって友達に説明して、支援の輪が広がるといいですよね」
KO「そうなんだよね。家族、職場、友達同士とかでも良いんだけど、皆が今度は持ち帰って自分の家族とか、できる範囲で『なんか支援とかやってるみたいだから集めてみない』っていう感じでちょっと集めて、レトルト10個集まりましたっていうならまとめて持ってきてくれればいいし。ダンボールひと箱集まったら、どこに送ったらいいかを俺に聞いてくれればいいし。それか、箱ごとここに持ってきてくれてもいいし」
後藤「はい」
KO「レトルト1個というよりは、一食なんだよね。レトルト1個って安いけど、人に一食おごってることと同じことでしょ」
後藤「そうですね」
KO「はっきり言って、レトルトとか、貰うほうも相当うんざりしてるんだよね。もらってありがとうという気持ちは言うけれど、多分、『またレトルトか』ってなっちゃうと思うんだよ。そんなに美味いものでもないしさ。だけど、100円とかでも小さく拾って、細かく、いざというときのためにやろうと思ったらレトルト食品しかないんだよね。やっぱり賞味期限があるから。インスタントラーメンは100円以内でも買えると思うけれど、インスタントラーメンよりはレトルトのほうが栄養面で良いし」
後藤「支援物資は何が良いんですかね?常々考えてはいるんですけど。現地の方に聞くと、日用品とか言いますよね。洗剤とか、消耗品がとにかくなくなるから」
KO「そうだね。シャンプー、リンス、洗剤。だけど、そこは分かるんだけど、シャンプー、リンス、洗剤、1000円以上はかかるよね、多分」
後藤「あとは、そういうのって好みがあったりするから。何でも嬉しいわけではないんですよね。『うわぁ、リンスインシャンプーかぁ、リンス分けたいなぁ』とか(笑)。そういう好みの問題も、物資を送るときにはありますよね」
KO「そうそうそう。本当にレトルトとかうんざりしてるところもあると思うんだけど…、仮設にずっと居たい人とか稀だと思うんだよね。1日でも早く仮設住宅から出たいと思ってるだろうからさ。結局、お金が必要だから、1日一食、500円でも1000円でも浮いて、その分を貯金してくれれば。そういうためにと思って、レトルトを送っていて。でも、レトルト馬鹿にされんのよね、被災地の人にも。たまにね(笑)」
後藤「またレトルトかぁ、みたいな(笑)」
KO「超凹むよ、アレ、本当にさぁ(笑)。この間も言われたの。今度、三重県の子が物資を持って被災地に行くって言ってて、——レトルト集めて行くって言ってたけど、被災地の人から、『レトルトとか捨てているのを見たことあるから本当にもう配るのとかヤメて欲しい』とかツイートされたっていう相談が俺に来て…。期限切れだったかもしれないから、それだったら仕方ないけど、地元の人がそういう言い方をする時代っていうかさ、そういう人もいるんだなって悲しくなったね」
後藤「そうですね」
KO「だってもう本当、『俺はレトルトなんて食いたくねえ、冗談じゃねえ』って、それで飯が食えてるってことは、まあ、それはその人のやり方でいいんじゃない? 俺も現地に居たら、レトルトなんて食うの嫌だから一生懸命働くよってなるもん。だけど、貰ったものがあるならさ、それを必要としている人に渡しに行くべきじゃない? 人の気持ちなんだからさ。捨てた人のことは分からないけれど、一個人なのに『捨てられてるのを見たことがあるから、もう送らないで欲しい』って書き方なのね。そういうヤツは被災地のヤツでも、人として間違ってないかと…」
後藤「いや、本当にそうですよね」
KO「100回くらい言われたよ、震災以降」
後藤「貰うことが当たり前になってしまうと、『レトルトはもういいかな』って僕も思ってしまうかもしれないです」
KO「確かに、本当にうんざりきてるのは分かるんだよね。自分がずっとレトルト食べてると思ったらさ、うんざりだもんね。何食べても同じ味しかしないんんじゃないかな、多分。う〜ん…」
後藤「でも3食に一回くらいだったら、僕はいいですけどね」
KO「ちょっとでもと思ってやってることだからさ」
後藤「最近のレトルト食品って、味がそこそこ美味いじゃないですか」
KO「そうだよね。麻婆豆腐とか好きだよ、俺」
後藤「カレーとかも皆でいろいろな種類を送るとか。ちょっと良いヤツあるじゃないですか、函館ホタテカレーとか(笑)。美味しいヤツを選んで」
KO「高いけどね(笑)」
KO「やっぱり、お米と防寒具とかが一番喜ばれるかな。己の無力さを感じるというか、やってもやってもというのがあるけどね…」
後藤「最近は、着るものがいいのかなと思っていて。ヒートテックとか」
KO「良いね。ヒートテックは良いね」
後藤「なんて言うんですかね、着るものって、価値が擦り減らないような気がするんです。3年間着たら、1000円のものでも1000円以上の価値が生まれている気がして。食べることは根源的なので大切なんですけど、食べてしまうと、忘れるなって」
KO「忘れるね(笑)。ヒートテックは凄く喜ばれるよね。昨日、ORANGE RANGEのYoh君からも電話がかかってきて、彼にも『ヒートテックで』って言って。また500枚くらい投入してもらうんだけど。公表してないけど、皆そうしてやってくれてるんですよ」
後藤「あと、KOさんは『自立支援プロジェクト』というのを立ち上げて、ミサンガなども作ってるんですよね」
KO「物資を支援する活動が『NBC作戦』って言って、当初からずっとやっているんですけど、物資を送っている地域の人たちにミサンガの資材を送って、 “被災地に仕事を作ろう”っていうプロジェクトで。被災地の方にちょっとでも仕事をしてもらって、タダで材料を送って作ってもらって、それを俺らが買い取って、販売するっていうのをやってるんだけど」
後藤「今までにはTシャツのプリントもやりましたし、トートバックもやりましたよね。2000枚くらい作って、僕らのツアーで販売したりして。事務所が在庫でえらいことになりましたけど(笑)。売上げも出ましたし、その利益で物資を買って送ったりもできましたし。意外と、こうやってモノを回すとできることが沢山ありますよね」
KO「そうそう。戻るんだよね。ちょっとしたお金でも向こうにつぎ込んで作ったものを、こっちで販売して膨らんだ資金をまた被災地に回してっていう、そういうことが今はできているんで。ちょっとづつだけど…」
後藤「ちょっとのことですけど、皆さんに協力してもらえると嬉しいですよね」
KO「支援物資のこととか、『自立支援プロジェクト』のこととか、広めてもらえたらなって。日々のことだからね、去年やったからじゃなくて。一回でも支援してくれるのも、もの凄くありがたいことなんだけど…。分かる人には、日々の生活っていうか、そういうものを感じてもらいたいな。皆が生活しているのと同じだからね、どこで生活していても。毎日お金がかかって。俺は何度も現地を見ているからかもしれないけど、放っておくわけにはいかないよね。本当に内職みたいな感じにしかならないんだけど、それでも『ミサンガ作るだけでも楽しい』って言ってくれるし。それで何万円かでも月にお金が入れば」
後藤「そうですよね」
KO「ただ婆ちゃんたち、黙って家に居て、お茶飲んでまんじゅう食ってるよりは、ミサンガ作ってるほうが楽しいみたいよ(笑)」
後藤「二本松市(※12)でも、飯館(※13)の人たちが避難されてきているそうなんですけど、補助金を貰って家にいるだけなのは辛いって、そういう話を伺いました」
KO「そうなんだよね。それがやっぱり問題になってるよね。パチンコとお酒…。昨日も山田町の人からメールが来てたんだけど、その子も言ってた。義援金で飲み歩いて、パチンコばっかりやってるのが問題になってるって…」
後藤「本当にそれぞれ、皆さん、出来る範囲で構わないんですけど、まだまだ困ってる人がいるので、少しずつ優しさをというか、困っている人を助けるのは、人として当たり前のことだと思っているので。偽善だとか言う人のことは無視していいと思うんですけど」
KO「俺、究極、仮設住宅の最後の一戸がなくなるまで、やっていこうと思っているんですよ。最終的に爺さん婆さん支援みたいないなっちゃうけど(笑)、20年後くらいには。まあでも、それくらい長期戦だと思っているんで。震災以降、しょうがないじゃん日本人は。もう俺たちは震災と付き合っていかないといけないから」
■注釈
(※11)カウンターアクション
KOさんが経営する札幌のライブハウス。
(※12)二本松市
福島県二本松市。福島県の北部に位置する。城下町として有名。
(※13)飯館
相馬郡飯館村。阿武隈山系北部の高原に開けた豊かな自然に恵まれた村。村内の大部分が居住制限区域に指定されている。