後藤「暮らし方によって、社会は変わると思いますか?」
竹内「ええ。暮らし方を選ぶことが社会を変えるし、変えたいと思ったら暮らし方を変えようよ、という話ですよね。なんだか今、みんなが諦めている感じがします。人口が減って、高齢者が増えていって、ひどい世の中になるなんて口を揃えて言うし、どうも悲惨な感じになっているんだけど。自分たちが変えることで、未来も全然変わるのにな。早く変えようよっていう気がする、スゴく」
後藤「そう言っていただけると心強いです。建物や家が変わるだけでも大きな変化だけど、街が変わるってものスゴい変化が訪れると思うんです。さっき身体の話でも出ましたけど、身体の使い方が変わることは、それぞれの生活にとって大きな変化だと思うんです。街やその動線が変わるということは、実際に身体の使い方が変わるということですよね」
竹内「本当にそうですね」
後藤「それにエネルギーステーションの話も、昔話ではおじいさんが山へ芝刈りに行っていましたから、先祖がえりしていけばいいってことですよね。薪拾いですもんね、要は」
竹内「そう、たしかにまき拾いです(笑)。それで快適になっちゃうんです。今は小っちゃなストーブでも暖かくなるから、そんなに薪を拾わなくてもいいです。エコハウスみたいな家を建てると、みんな“まきストーブにしたい”って言いますよね。スゴく寒い家でまきストーブをやっている人には“大変だよ”って言われるけれど、実はそんなに燃やさないで済むから、薪はちょっとでいい」
後藤「いいですね。脱原発みたいな活動って、ともすると修行感というか、悲壮感が出てきちゃうので、そういう無理のないやり方で変わっていけたらと思うんですよね。人に何かを勧めるときも“やっぱり、だってこれ、いいんだよ。なんか快適だよ”みたいなほうが、絶対に食い付きがいいはずだし」
竹内「そう。エコハウスにしても“やっぱり快適だよ”って、住んでいる人が言ってくれるのが一番ですから」
後藤「そこ、お金に換えられないところですもんね」
竹内「ぜひ今度、山形のエコハウスにも寒いときに来て、暖かさを体感してほしいです」
竹内昌義(たけうち・まさよし)
1962年神奈川県生まれ。建築家、東北芸術工科大学教授。95年から建築設計事務所『みかんぐみ』を共同主宰。主な代表作に『SHIBUYA AX』『愛・地球博トヨタグループ館』『伊那東小学校』『マルヤガーデンズ』『山形エコハウス』など。『団地再生計画/みかんぐみのリノベーションカタログ』『未来の住宅』『原発と建築家』『図解 エコハウス』など、著書・共著書多数。