どこか遠くのできごとのように感じてしまうエネルギー問題。でも、身近な住まいから考えてみることもできる。そんな取り組みを「エコハウス」で始めた建築家が竹内昌義さん。新築よりもリノベーションの物件が増えていく未来。暮らし方が変わることで、循環型社会が実現するだろうか。
後藤「竹内さんには、僕はずっとお会いしたかったんです。著書の『原発と建築家』も買って読んでいたんです」
竹内「ありがとうございます。意外と読者が少ないんですけどね(笑)。読んでくれている人は、いろいろ意識を持ってくれている人が多くて、あの本は出してよかったなと思っています」
後藤「東日本大震災の直後、新横浜の駅まで行く用事があったんですが、辺りがあまりにも暗かったんです。どこの電気が消えているのかを見て驚いたのですが、例えば、エスカレーターの手すりの下に1本1本、びっしりと蛍光灯が埋まっていたんですね。それまで意識したこともなかったのですが、これって、わざわざ電気を使うために建築されているんじゃないかって思いました。そういう経験もあって、いつか建築家の皆さんにしっかり聞いてみたいと思っていました。そのタイミングで、竹内さんの本が出版されたんです」
竹内「あの本の出版前、山形の大学(東北芸術工科大学)で何が教えられるんだろうと悩んでいた時期がありました。街にある蔵をリノベーションしたり、いろいろやっている中で、もうちょっと特徴を出したいなというのがありました。自然がいっぱいあるから、林業を大事にして、山形の木を使って家を建てるというのは、とても健全な気がしたんですね。それで、森みわさん(竹内さんとの共著に『図解エコハウス』がある)にも授業に協力してもらいながら、山形に1軒『エコハウス』を建てたんです。それが2009年の秋でした」
後藤「震災の前だったんですね」
竹内「ええ。そのとき、森さんが学生たちへ課題を出したんです。それは、映画『ミツバチの羽音と地球の回転』(監督:鎌仲ひとみ)を見た後、祝島に建てる建築のプランを考える内容。“サステナビリティを大事にした島で、あなたたちは何ができるか考えてみてください”と。それまでの僕は“原発というものがあるなぁ”と漠然と思っていました。だからそのとき初めて、建築とエネルギー問題が結びついた感じがします」
後藤「僕もその映画を見ました。もともと原発に興味を持ったのが、鎌仲監督が撮られた1本前の映画『六ヶ所村ラプソディー』だったんです。それから興味を持って、実際に六ヶ所村や上関へ行ったりしたんです。それで、原発についての穏やかな意見表明のようなものを書きました。そして数日後に震災が起きた。今でも不思議な感じがするんですけれど」
竹内昌義(たけうち・まさよし)
1962年神奈川県生まれ。建築家、東北芸術工科大学教授。95年から建築設計事務所『みかんぐみ』を共同主宰。主な代表作に『SHIBUYA AX』『愛・地球博トヨタグループ館』『伊那東小学校』『マルヤガーデンズ』『山形エコハウス』など。『団地再生計画/みかんぐみのリノベーションカタログ』『未来の住宅』『原発と建築家』『図解 エコハウス』など、著書・共著書多数。