東北の大学生と一緒に記事を作ってみたい。そんな想いからスタートした記事作りは、学生たちがそれぞれの “震災” について語り合うというテーマに着地しました。やや内向的に感じられるテーマかもしれないけれど、記事にたどり着くまでの経緯を知ると、彼らの実直さに胸を打たれ、とても清々しい気持ちになります。彼らと同世代の学生の皆さんに、そして所謂 ”大人たち“ にも届いて欲しい言葉たち。そんな座談会の模様です。
後藤「今日は、記事を作るところから、どんなことをみんなが考えて、どういう過程でこの記事を作ったのかという話ができたらと思います。よろしくお願いします」
一同「よろしくお願いします」
後藤「最初に、みなさんはどうやって集まったんですか?」
板井 「最初に後藤さんから “一緒に記事を作りませんか?” と連絡をいただいて。でも、記事を作ろうと言っても書ける余裕のある人がその場にいなかったんです。それで最初に僕が声かけたのが同じ学部で、『情報ボランティア@仙台』で活動をしている大高さんでした」
後藤「情報ボランティアというのは、どのような活動なんですか?」
大高「被災地の今を取材して “被災地でこんなイベントがありますよ” だったり、 “こんな頑張ってる人がいますよ” ということを広く紹介していくボランティアですね。主に仙台で活動しています」
板井 「大高さんがそういう活動をしていることを知っていて、ちょうど同い年で知り合いだったので、メッセージを送って、一度話をして、興味を持ってくれて。メンバーは彼女が紹介してくれた人たちですね」
後藤「みなさんがどんな記事を作るのか、興味深かったんですよ。最初は、誰かに話を聞きに行くのかなと思っていたんです。そうしたら、みんなで “自分の震災” について話し合うという流れになりましたよね。僕は記事の内容をみなさんが決めたときに、 “それって内向きすぎないかな?” と思ったんですけど、話し合いの場では、どんなことが話し合われたんですか?」
板井 「やっぱり最初に “東北の学生にしか作れない記事” というテーマが、すごく大きくて。最初のメールにも書いてありましたし、それについてすごく考えました。序盤の話し合いはアイデアとしてたくさんいろんなものが出てたんですけれど」
後藤「ちなみに、どんなものが出たんですか?」
國井「最初にみんなで集まったときに、教育の話だったり、伝統工芸と若者の話だったり、それなりにおもしろそうな話題はいくつも出ていて。やっぱり、序盤は “それでいってみよう!” というものがいくつかあったんですけど…」
板井 「おもしろそうだなというのが沢山あったんですけど、結局どれもプロができることじゃないかと悩みました。確かに仙台という地理的なメリットはありますけれども、社会人のプロの方が来て、プロのノウハウを使って取材して、そのノウハウによって記事を書いたほうが同じ取材をしてもいいものができるんじゃないかというふうに思って。学生にしか作れない記事というのは、言い方は悪いかもしれないけど、ちょっとバカになってやりたいことをやってみる、それが一番求められている記事なんじゃない? という話を友人としたんですけれど、どうしても僕がそういう考えができなくて。東京のプロが作ったものの劣化版となるのはすごく嫌だというところが、その時の悩みでした」
國井「学生らしい記事って言われたときに、学生自身である私たちには、その学生らしさがわからないんですよ。そういうのはすごい苦しんで…」
後藤「なるほど。それは僕の伝え方が悪かったですね。僕が思う学生の魅力って、時間がいっぱいあることだと思うんです。自分が学生の頃を思い出してみても、時間だけはあった。でも、金はまったくなかったけど(笑)。『THE FUTURE TIMES』の記事を作るってことは、言い方悪いけど、僕という “金ヅル” がいるっていうことじゃないですか。例えば、みんなが “宮古の◯◯へ取材に行きたい!” と言ったら、僕は宮古への電車賃や経費はもちろん出しましたし。若さって、自由に使える時間があるということと、体が動くということだと思うんですよ。昨日、僕は遠田郡に行って田んぼの草取りの手伝いをしてきたんですけれど、まだ全然筋肉痛になってない。でも僕は多分、明日筋肉痛になる(笑)」
一同「(笑)」
後藤「そういう、動かなさというのがあるんですね。老いからくる鈍さ(笑)。あと、若い人にしかできないことって、例えば、みなさんがいろんな町々に行って “お話聞かせてください” って言ったら、現地のおじいさんたちは、プロの人に話すより、いろいろな話を教えてくれると思います。学生たちが “東北の大学で勉強をしていて、私たちなりの震災の記事を作っているんですけど” って話すことで入っていける場所って、プロとは違うと思うんですよね。ということを、 “今さら言うなよ” って思うかもしれないけど(笑)」