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循環する産業とエネルギー Vol.2〔前編〕

安くて品質の良いチップを作ることができる

後藤「この機械の特徴を教えて下さい」

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山本「特徴としては、打撃系ではなく切削系の破砕機で、直系42cmの丸太を破砕できます。時間あたりの処理能力は100m3、このトラック3杯分ですね。ナイフで切削するものですから、非常にきれいなチップができます。今までのバサバサの打撃系のチップにくらべて、保管と運送のコストが非常に安いです」

後藤「なるほど」

山本「打撃系のチップは嵩(かさ)があるものですから、30トン積めるトラックに20トンしか積めなかったりしますので、この機械だと輸送コストとか保管コストを省くことができますし、均質なチップなものですから、ボイラーとか発電所の熱源のところでトラブルを起こさないというのが特徴です」

後藤「良いですね」

山本「これはリモコンで動かしています。今まで工場でやっていたものが、オペレーターひとりでできます。工場に持ち込んだりする場合、いろいろな行程があったんですけど、この機械だと土場でチップを生産することができるので、今までにかかっていたコストをかなり省くことができます。それが先進的というか、これから重要になってくるのではないかと」

後藤「建物としての工場を造らなくても、この機械を持ってきて現地でできるということですよね」

山本「はい。今まではこういった貯木場に置いておいて、それを工場に運んで、運んだものをチップ機にかけて、またトラックに載せてユーザーに届けていたものを、これだと貯木場に機械を置くだけで、人もユンボのオペレーターさえいればチップを生産することができます。安くていいチップを作ることができるので、はい」

後藤「良いですね。この破砕機のメンテナンスはドイツ人の技師を呼んでやるんですか?」

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山本「いや、メンテナンスは我々と、現地の建設機械メーカーさんと一緒にやるようなかたちです」

後藤「そうなんですね。よく向こうの機械を買うと、ヨーロッパから技師を呼ばないと直らないとかいうことがあるじゃないですか」

山本「実のところ、最初の頃はそういったことが多かったんですけど、もうこの機械を販売して4年か5年経つので、我々の技術者がドイツに行って研修を受けてきて、サービスするようなかたちになりますね」

「重油を使っているところを、一つひとつ取り返していこう」

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後藤「チップにしたものは、木材の乾燥の施設に持っていってるんですか?」

松田「まだ事業としてはやっていないんです。試験的なものなので。今日は集成材工場に置かせてもらうというか、捨てさせてもらうというか…。まだ単価いくらでというレベルの話ではないので」

後藤「集成材工場というのは、どういう施設なんですか?」

松田「従来であれば、丸太を四角く製材して、柱として建築に使うんですけど、そのままだと木がよれたり曲がったりとか、欠点がでるんですよ。きちっと乾燥していなかったり、乾燥しても今度は割れてしまったり。集成材っていうのはその欠点を除去するために、この四角い柱をラミナっていう挽板(ひきいた)にするんです。それを4枚5枚なり積層して重ねたものが集成材っていう商品です。反対に反るものをたがいちがいに重ねて糊で接着して柱や梁を作るっていう」

後藤「そこにチップを持っていって、捨てるだけなんですか?」

松田「集成材をつくる行程で大事なのが、木材の乾燥なんです。木材は切ったばっかりのときは含水率150%なんです。木が生きている状態から、乾燥させることによってカチっとする。そういうものの熱源に、カットして余った木材を燃料として使っています」

後藤「丸太を柱にしても、余りますもんね、木は。それを燃やして熱を取っているということですね」

松田「その集成材工場では、そうです。冬場になると足りないから、重油を買っているそうです。その買っている分をチップでどうかみたいな、そういう話をしています。重油を使っているところを、一つひとつ取り返していこうみたいな」

後藤「重油と比べて3割4割安いんですもんね、チップは」

松田「そのかわり問題は、ボイラーが高い。重油炊きのボイラーが普及しているし、チップボイラーみたいなのが今まで普及していなかったから、6倍とか8倍とか値段がするそうなんです。それで尻込みしてしまうんです」

後藤「なるほど。もっと普及して安くなってくると、一気に話が進むってことですね。ハイブリットのボイラーができて欲しいですよね、重油とチップの」

松田「そういうのもあるんだよね?」

山本「コージェネボイラーって言いまして、チップと重油とか、食用の廃油なんかを混ぜて、どちらでも切り換えることができるボイラーが、今はあります。ただ、なかなか高いものですから、まだ普及してないっていうのが現状で…。やはり国内産よりも外国産の性能が良くて…。国内ではなかなか生産がないものですから、それでまだ普及が進んでないってのがあるかもしれません」

後藤「山本さんはこの重機の会社の方ですか?輸入されてるんですか?」

山本「はい。ドイツから輸入して販売活動をしています」

松田「山本さんの緑産株式会社っていうのは、輸入した機械を一生懸命やられていて。この木材破砕機もそうなんですけど。メインは農業で」

山本「そうですね。メインは家畜排泄物の有効活用というようなかたちでやらせてもらっています。家畜の排泄物というのは最終的に堆肥になっていくんですけど、堆肥にするにあたって、水分調整剤というのが必要になってくるんです。その水分調整剤にこの木材は非常に優位性があるものですから」

後藤「堆肥を作るのにチップが役立つということですね」

山本「そうです。これを水分調整剤にして発酵をうながしてあげると」

後藤「コージェネレーションだけではなくて、農業にも使えると。こういう木を、使ってなかったのはもったいないですよね」

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松田昇

松田昇(まつだ・のぼる)

有限会社松田林業
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山本

山本磨(やまもと・おさむ)

緑産株式会社
www.ryokusan.co.jp