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農業のゆくえ-宮城-

「田植えって大変だけど楽しいでしょ?米どころ・宮城の小学生は、授業の一環で稲を育てるんだよ。実はお米ってバケツでも育つものなんだよね。稲作や農作業がみんなにとって少しでも身近になるといいね」

果たして、農業の〝新入生〟たちが植えた苗は、立派に実りの季節を迎えることができるだろうか。

「時間さえあれば稲が育つ様子を見に来たいよね」と話す参加者たち。ここに通うことで、稲の成長とともに育まれる交流もあるかもしれない。
田植えを終え、遠藤農園の母屋へ戻る途中、ある実感が自然と込み上げてきた。ほんの1年前まで、この一帯は美しい水田が広がっていた―。映像でもない、文字としてでもない、実際の田んぼに足を踏み入れたからこそ湧いてきた感覚なのだろう。同時に〝被害が大きかった〟とされる風景を前にしたところで、ありし日の姿を具体的に思い描けなければ、荒浜が受けた被害の本当の大きさなど量りようもないと思う。
遠藤さん親子は、周辺の住民がほとんど戻らぬうちから、母屋のリフォームや畑の再生に取り掛かった。喜一さんには「自分たち専業農家がこの一帯を、そして宮城全体を引っ張っていかなくちゃいけない」という強い想いがある。
そして、この土地に住まいながら驚くほどの速さで農園を再生させ、着々と新しい取り組みを始めている。「東京からここへやって来てくれるの若者たちからはね、いつも元気をもらってますよ」と話す喜一さん。

「被災地のど真ん中に、気負わず訪ねられる場所ができました。自分が東北に行ったところで何の役に立てるというのか、なんてことを考えていてももう仕方ない。理屈じゃなく、まず動く。きっと自分にもできることがあると思うので」

参加者の石井さんはそう口にした。
遠藤農園と復興クラブの活動は、被災地の力になりたいという思いだけでなく、農業を通じて、新しい人と人の繋がりを生み出している。そこには都会と被災地を結ぶ、新しい復興のヒントが詰まっている。

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土と触れ合うと段々と表情がやわらぎ、みんな元気になってくる。農作業とは、やりがいのあるものだ

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東北復興学 〜“自分がどう関わるか”を考える授業〜

自由大学と遠藤農園が交流を持つようになって以来、復興クラブの中心メンバーである大内征さんは、この農園での活動を主軸とし、故郷でもある仙台のために何ができるかを探ってきた。昨年は三度にわたり、自由大学の卒業生たちと農園でのキャンプを開催。参加者と話して確信したのは、単発のボランティアにとどまらず、東北のこれからを一緒に考えながら、中長期的に被災地と関わり合いたいと考えている人が多いということだ。

「直接的な被害を受けた地域をただ元に戻すだけでなく、日本のこれからを担う世代が、東北沿岸部のゼロベースになった土地と関わり合いご縁を持つことで、単なる被災地の復興にとどまらない、様々な変革が生まれるチャンスがあると思うんです」

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大内さんはこの春、自由大学で全6回の講義『東北復興学』を開講、教授を務めた。受講者の多くは、募金や物資の支援はしたものの、自分はほとんど何もできていないと感じる、東京に住む20〜30代の社会人。講義には、普段は東京で仕事をしながら、南三陸町と行き来して様々な活動をする方をゲストに招き話を伺ったり、この遠藤農園でのフィールドワークも組み込んだ。

「自分が仕事を通して得てきたスキルを、震災以降の日本社会にどう効率的に還元していくか。これから先を考える上での重要なテーマです」と大内さん。

“東北被災地の復興=私たちの未来”と位置づけた『東北復興学』講義は第2期が現在開講中(2012年10月現在)。荒浜の遠藤農園で始まった『復興クラブ』の活動についても気になった方は、自由大学のWEBサイトでチェックを。

自由大学 WEBサイト

(2012.10.10)
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