都心ではシェアハウスという言葉をよく聞くようになったが、石巻では車を数人で共同使用するカーシェアリングが広まっている。
「1台を共同使用するのは5人くらい。鍵は利用者に管理してもらい、仮設住宅の集会場にノートを置いて、希望日時を書いて予約するんです。細かいルールは利用者同士で決めてもらうので、ガソリン代は距離に応じてのカンパ制や満タン返しなど場所によって異なりますよ」
日本カーシェアリング協会の代表、吉澤武彦さん。活動を始めたきっかけは、阪神淡路大震災の支援経験者からアドバイスを受けたこと。神戸では中心部から離れた場所に仮設住宅が建ち、車がなくては不便な生活だった。石巻も同じ状況になると予想されたので、仮設住宅が建つ前の昨年4月から車を集め始めたという。
「6月から現地調査を行い、7月下旬に1台目の車を届けてテスト運行を開始しました。県警や運輸支局の指導も入り、利用者とともに仕組みを考えながら、ひとつの形になってきました。今、動いているのは30台くらい。(2012年1月末時点)確保している車を合わせると50台ほどになります」
「個人や企業から車を提供いただき、保険代など初期費用15万円が準備できたら車を引き渡します。この費用は1口1000円の『くるま基金』として一般の方から寄付を集めたもの。助成金も下り、やっと活動が軌道に乗ってきました。現メンバーでは手が回らなくなってきているので、一緒に動いてくれる人も募集しています」
車をシェアすることで、交流が生まれる。住民同士で送迎する助け合いが始まった例もあるなど、嬉しい連鎖が広がっている。2月には市とともにカーシェアリングコミュニティセンターを立ち上げた。これから免税や保険の交渉を進め、カーシェアリングの環境を整えていく。
利用者 渋谷巌(しぶや・いわお)さん
昭和37年に免許を取り、ダンプやバス、タクシーなど 〝運転手人生〟だった渋谷さん。歩いて1分の買い物も車を使うほどの車生活だったが、震災から半年間は運転する機会がなかったそうだ。 「車は2台持っていたけれど、津波で流されました。家も全壊したんです。カーシェアリングの制度に関しては、何度も協会が足を運んで説明してくれました。バスは時間の自由がきかないから、車があるとやっぱり便利。説明を聞きに来ていた同じ仮設の5人で、1台をシェアしています。ガソリン代はカンパ制で入金します。妻が病院通いをしていて、病院や買い物など、3日に一度くらいの頻度で使いますよ。とても助かっています」
利用者 大泉 峰子(おおいずみ・みねこ)さん
「知人に勧められて、カーシェアリング協会に連絡しました。他県の友人が軽自動車を譲ってくれたので、車はあるんです。でも、近くの仮設住宅に娘家族が住んでいて、一緒に買い物などに出かけることが多いので、人数が乗れる大きめの車があれば便利だなと思っていました。ちょうど同時期に大型の車を提供してくれる人がいたということで、2週間ほど待っただけで利用できることになったんですよ」
平日は働きに出ていて、仮設住宅内の交流は少ないという大泉さん。カーシェアリングの車を駐車することで興味を持つ人が出てきたり、仮設住宅内での交流が生まれたりしてほしいと吉澤さんは言う。
現地での活動に興味がある人は、以下のWEBサイトにアクセスしてみてほしい。今回掲載した『サンライス元気村』『日本カーシェアリング協会』のほかにもプロジェクトがあり、動き自体も随時、現地の状況に合わせての柔軟さが求められている。短期でももちろんいい。あるいは時間が取れるならば中長期のボランティアでじっくり石巻と向かい合ってみるのもまたよし。活動に参加を希望する際はサイト内のフォームから申し込める。気になった人は、ぜひ一度ここを足がかりとして現地と絆を結んでみてほしい。
『OPEN JAPAN』http://openjapan.net/
吉澤 武彦(よしざわ•たけひこ)
日本カーシェアリング協会 代表理事
「車両そのものの提供、くるま基金、そして車を運転して石巻まで運んで来てくれるドライバー…、この取り組みをよりスムーズにするにはまだ多くの人の手が必要です。被災地のために、本気でこの1年から2年というまとまった自分の時間をかけてみよう、という担い手も募集しています」
日本カーシェアリング協会