—そんなマインドを取り入れた未来って、どうなっていくんでしょうね?
服部「私は妄想癖があって、“コンビニがこうなるといいな”とかよく考えてるんですよ。未来のコンビニは、店のすみっこにおばあちゃんが座っていておしゃべりできたり、水もペットボトルじゃなくて、すごくきれいなお姉さんが注いでくれたりするの(笑)」
後藤「それはいいですね(笑)」
服部「シルバー世代の雇用もあって、電力も自分たちで作っていて、やたら人がいて、わいわいしているみたいな。コンビニは無くさなくてもいい。現状でみんなが好きなものは残しつつ、やり方だけ変える。そうすれば本当に、みんなにとって心地よい場所が作れるんじゃないかな」
後藤「“みんなにとっていい”環境ってなんだろうって、想像してみるのも大事ですよね。少し前に話題になった、飲食店で働く人の過労自殺の話も、あれだって、企業だけの責任もあるでしょうけど、もっと大きく考えると、朝まで飲みたいやつが多いから起きている側面もあると思う」
服部「なるほど」
後藤「みんなの欲望を引き受けて過労になっている。そうしたら不買運動するよりも、朝まで飲みに行くこと自体をやめてみるとか。みんな、過剰なサービスを求めすぎて、イライラしているような気もします」
服部「みんな、働き過ぎですよね。自然療法とか『冷えとり』をしていると、自然と身体が無理できなくなるんです。でもそれくらいがちょうどいい。みんな、もっと無理できなくなればいいんです」
後藤「そういう過剰なシステムの中で起きた、ニュースなのではないかと思います」
服部「本当に…。日本人ってみんな真面目だから、朝まで頑張って働いちゃったりする。サラリーマンも、栄養ドリンクとか飲んで頑張ってるかもしれないけど、それで働き過ぎてガンになって、最後に多額の医療費を払って死んでゆくのって本当におかしいと思う!」
後藤「徹夜してまで仕事するなんて、もう僕には無理です(笑)」
服部「今日の後藤さんのテーマ“老い”だな(笑)」
後藤「“老いと未来”(笑)」
後藤「本当に、一人ひとりが何を選択するかの積み重ねでしかないですよね。“選んでる”ってことを意識してほしい。いい音楽が選ばれるようになれば、音楽業界全体がよくなるように、選ぶものによって、社会は変わるから」
服部「それも、やらされているんじゃなくて、自分たちがやるんだ!っていう気持ちになるといいですよね。『マーマー』を作っていると、後藤さんがおっしゃっているような事を感じる人たちが増えている手応えを感じます。ただ、メインカルチャーでは無いので、地道にコツコツやるしかないんですが。とはいえ、男性の読者も最近増えてきていて、ようやくこういうコンテンツも世の中に受け入れられてきているかな、と思います」
—『murmur for Men』もこれから創るんですよね?
服部「そうなんです。今までなら男の人は“よし、出世だ!”とか“有名になってやる!”とか、“オラオラ”って感じでやっていけたけど、震災が起きた後は“これから一体、何をやっていったらいいの…?”と思う人が増えたように思います。感受性の高い人はいいけど、今まで“オラオラ”で生きていこうとしていた人は、これから目標を見失っていくような気がして。だから、“オラオラ筋”を何か別のものに向かわせるヒントをお伝えできたらいいなって。というわけで男性版を作ろうかな、と」
後藤「みんな結局、最後には死ぬってことを意識したほうがいい気がするんですよ。死んだら何が残るのって(笑)」
服部「本当にそう。死んだあとに魂の中に残るもの、例えばどういう体験をしたとか、どんな感動を味わったとか、そういうもののほうが大事ですよね」
後藤「死んだ後に、いっさいがっさいは持って行けないというか。名誉を守るより、今、愛しい人を抱きしめるほうが意味があると思う。いったいみんな何を大事にして生きているんだろうって」
服部「みんなには“本当は何したいの?”って聞きたい。みんなもっとこれからは“自分と打ち合わせ”したほうがいいと思うんです。人と一生懸命打ち合わせするよりも、自分はどう生きたい?どうしたら幸せ?本当は何食べたい?って、真剣に考えたらいいと思う。今までの価値観で、“こうするべき”で動いちゃうと、不具合が出てくる気がするんです。答えは自分の内側にあって、外側にはない。そして、自分と真剣に向き合って出てきた本心は、宇宙や自然の大事な部分とリンクしていると思っています。ドスっと地球の中心に自分が突き刺さるというか。そういう軸ができると、右往左往しなくなって、本当に、なんの心配もいらないと思うんですよね。そして、誰かが上からわーっといっぺんに変えるより、一人ひとりが、自分と打ち合わせして、そうして全体が変わる時代になったんじゃないかとも思います。だから、これから私も読者の方々と、読者の目線で、今までにないような本作りをしていきたい。読者の皆さんがもっと主人公になるような本作りです。私が見てきたものを“こうだよ”って見せるのは、表現としてはやや古いかなって思うんです。絵本の『スイミー』で、小さな魚がいっぱい集まって大きな魚に見せるみたいに、みんながちょっとずつでいいから変わると、“こんなの変えられないよ”って思うことも一晩で変えられちゃうかもしれない。そういうチャンスが今、来てるんじゃないかな」
服部みれい(はっとり・みれい)
『murmur magazine』編集長。自身も執筆活動も行いながら、冷えとりグッズを扱う「mm socks」、本のレーベル「mm books」を主宰。『冷えとりガールのスタイルブック』(主婦と生活社=刊)の企画・編集ほか、著書に、『あたらしい自分になる本』(アスペクト)、『オージャスのひみつ』(蓮村誠=監修 マーブルトロン/中央公論新社)、『あたらしい自分になる手帖』(アスペクト)、『みれいの部屋 ニューお悩み相談』(主婦と生活社)、『服部みれい詩集 甘い、甘い、甘くて甘い』(エムエム・ブックス)など多数。
最新号『murmur magazine』16号(エムエム・ブックス刊)、『あたらしい東京日記(大和書房刊)』、ともに6月23日発売予定。
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