後藤「僕のところには、たまに “デモってなんで繁華街でやるんですか?” みたいな質問が来ます。邪魔じゃないかとか、逆効果じゃないかとか。でも、そういうときには “デモって行為は基本的に為政者に向かってやってるんだ”って答えてたんですけど、それについてはどうですか?」
平野「まず、ほとんどのひとにとって、デモをやること自体が普段の生活からかけ離れた行為ですよね。だから、むしろデモに慣れるっていうのがすごく大事だったのかなって今は思いますね。多分、いきなり霞ヶ関でやってもどうだったんだろうと思うし。そもそもデモをやるってのがすごく遠い行為——自分も3.11前はそうだったので…」
竹中「この国は特にそうですからね」
平野「だからやっぱり、それを去年の4月から少しずつ大きな岩を崩していくような感じで、やってきたんだと思います」
後藤「いろいろなデモを見てみて、僕はデモを渋谷とかでやるのは良いと思いましたけどね、“実”というのを考えると。たまに霞ヶ関を散歩してみると、例えば地方の農家の方々がTPP反対デモをやってるんですけど、報道されずに、誰にも知られずに、もちろんその日は仕事を休んで皆さん参加してるでしょうから、すごいエネルギーだと思うんですけど、見ていて寂しくなるんですよね」
竹中「中枢に向けてやるのは、ある意味 “絵作り”というか。だから、我々も『TWIT NO NUKES』、反原発連合で官邸前抗議をよくやっていますけど、あれは完全に官邸に向かってやってるじゃないですか。この前は土曜日にやったんですけど、あの辺は休みでも平日でも歩行者とか一般のひとがあまりいない地域じゃないですか。でも、ひとが1000人集まる、絵作り的なものも大きいと思いますよね。それだけのひとが怒っている、抗議しているという」
後藤「はい」
平野「もちろん、その新聞などのメディアに取り上げられるのも大事だと思うんですけど、実は首相官邸前抗議って、官邸のとなりに議員会館があるので、ある議員の秘書から “毎週毎週うるさい!”って言われたという方のツイートもあったりして(笑)。だから、結局、絶対に為政者がそういう動きをちゃんと見てるんだなって感じるところはあって」
後藤「やり方がスマートですよね。ちゃんと、金曜日の夜とかに行くと、もちろんあそこで働いているひとたちが帰宅するときに抗議を見かけていきますからね。自分がもし官僚だったりとか、議員だったならば、毎回目に入りますからね」
平野「なかなかあの規模はなかったと思うんで」
後藤「そうですよね」
竹中「実際、1年前くらいは、個人で官邸前で抗議しているひとがいたんですよ。僕の知っているひとなんですけど。4、5人とかで同じ場所でやったりしていて。当人も言っていたんですけど、今や1000人規模になって、根付いたのはすごいなっていうか。本当に参加される皆さんも、意識を常に持っているひとが、まあ1年って期間をどう思うかってのもあるんですけど、増えたというか。それがやってきた甲斐ではあるんじゃないかなと思います」
後藤「TWIT NO NUKESのデモは今、1000人くらいからもう少し増えたんですか?横ばいですか?」
平野「僕らのデモはずっ1000人規模を保っているという状態で。それでも一年やってきて、多分ひとは入れ替わってはいるので、そういう意味では参加したことがあるってひとはそれなりに広がっているとは思うんですけど」
後藤「そうですね、確かにね。僕も毎週行けるかっていったら無理ですからね。仕事があったら行けないですから」
竹中「事故が起きて一年ちょっとですけど、デモに行くようになってから2、3ヶ月っていうひとがいて、その2、3ヶ月の間にデモを主催までするようになっちゃったひとっているんですよ(笑)。だから、やっぱり声の上げ方を知らないだとか、問題の大きさの受け止め方の違いがあるひとはまだいるので」
後藤「そうやって遅れて入ってくるひとたちが実は重要ですよね。そういうひとたちは息が長い気がします」
平野「そうですね。首相官邸前の抗議をやりはじめてから、デモには行かなかったけど首相官邸前には行きたいって言って参加してくれたひとたちもいて、それはやっぱり、今まで繁華街でデモをやってきた主催としてはアレなんですけど、結局、繁華街のデモはなんの為にやっているのか分からないとか、お祭り騒ぎに見えるみたいな、そう思うひとがいるのも事実で…」
後藤「はい」
平野「実際はすごく真面目にやってるんですけど、そういうふうに見えている部分があるっていうのは事実で。それで、初めて首相官邸前で抗議ってなったときに、対象もはっきりしてるし、すごく真面目な抗議行動なんだ!って言って、行ってみたいと思うひとがいたりとか。本当に、そうやってデモや抗議の場所が変わったりだとか、何かのきっかけで動くひとたちって、まだ沢山いるんだろうなって思うんですよ。今参加しているひとたちのことも気にするのも大事なんですけど、その外側にどうしたらアピールできるのかなって、それは結構考えてます」
後藤「国会議事堂前の広い通りに10万人くらい集まったら多分、原発止まりますよね」
黒澤・平野「そうですよね」
竹中「本当、そうしたかったというか…」
後藤「いや、多分、欧米だったらそうなってるでしょうね。もっとすごいかもしれないですよね。100万人くらい来るかもしれないですよね」
竹中「本当に事故後に、100万人くらい集まれば(原発が)止まると思ったんですよ。でも、この国はふたケタ落ちるだろうなと思って。1万人くらいは来るだろうなって実は思ったんですよね、事故直後は。でも、それすらなくて…。我々のやっているデモもさらにひとケタ下の1000人前後じゃないですか。この国は本当に特殊というか…。やっぱり、この国はこの国のやり方とか考えていかないといけないのかなと思ったのも、今参加してやっているひとつの理由なんですよね。過激なことやれば良いかって言ったら、そうではないですからね、正直。この国は特に過激な運動をやったら“バカがなんかまたやらかした”って思われると思うんですよね」