HOME < -Twitterから始まったデモ-TWIT NO NUKES〔後編〕

TWIT NO NUKES

■前編を読まれていない方はこちら

福島第一原子力発電所で起きた事故は、現在でも、避難生活を余儀なくされている人だけではなく、様々な困難と軋轢を全国各地で生み出している。「何をしていいのか分からないけれど、とにかく声を上げなければならない」。若者たちの小さな決意が、ひとつのツイートをきっかけに繋がってはじまった反原発デモ『TWIT NO NUKES』。その成り立ちと想いについて、中心メンバーの平野さん、竹中さん、黒澤さんに聞いた。デモに偏見を持っているひとにこそ読んで欲しいインタビュー。

取材・文:後藤正文 撮影:栗原大輔

日本人のメンタリティについて

竹中「デモの話もそうなんですけど、日本は、声が大きい音が大きいだけで“迷惑”っていう風潮があるなって。声高に主張するとか、単純に音がデカいだけでも、内容とか見ないで迷惑っていう(笑)感じがすごくあるような気がするんです」

後藤「それはありますね。“迷惑かけんな!”っていうメンタリティーのひとが多いんですよね」

平野「例えば、マラソンで道路が封鎖されてても、あんまり迷惑っていうひとはいない気がするんですけど(笑)、ただ、デモに関してはかなり言われるっていうのは、やっぱり、声を上げている、何かを主張しているひとたちが車道を歩いているってい うのが許せないみたいなのが、どっかにあるんじゃないかな」

後藤「出る杭(クイ)として見ているってことですよね」

平野「そうですよね。そういうのはすごくあるんじゃないかと思います」

竹中「面倒くさいっていう感じがする。面倒くさいことに関わりたくない感。そこをどうやって乗り越えるのかというか、縫っていくかっていうか」

平野「でも、沿道の反応が変わってきたっていうのも多分、ちょっとずつ、一人ひとり変わっていってるとは思うんですよね、本当に微々たるものだと思うんですけど。そうでなかったら今でもすごく冷たい反応をされてたんじゃないかなと思うんで」

後藤「ある程度世の中にも原発に対して異を唱えているひとが増えてきているというか、う〜ん、まあ福島の原発事故を機にワっと増えたと思うんですけど。全然状況が違いますよね、事故の前と後では。六ヶ所村での再処理もまずいし、原発の何がまずいかって、本当に放射性廃棄物を捨てるところないですよっていうことだけだったんですけどね、僕は。震災以前から、それは日記にも書いていて。今でも原発自体への疑問より、そういう気持ちのほうが強いかもしれない。石巻の放射性物質をほとんど含んでいないって言われている瓦礫ですらどこでも燃やせないんだったら、——反対しているひとたちにもいろいろな正義があるので全否定はしませんけども、本当に高レベルの再処理された放射性廃棄物って近づいたら即死レベルですから、そんなもの“我が町で!”って、そんなところないでしょうって」

竹中「そうですよね」

平野「本当に。処分場の問題だけをとっても、原発ってもう詰んでると思うんですけど。それは3.11以降、原発はなくなったほうがいいってのは、ほとんどのひとがそう思ってはいると思うんですけど。ただ、電力不足とか、どうなるのとか、いろいろな “NO” と言い辛いようなところはまだまだあるとは思うんですけど…」

後藤「そうですね」

平野「でも、ちょっと議論になると、“いや、僕も原発がなくなったほうが良いと思うけど”みたいな。だから、原発を容認しているひとたちも、すっきり容認とは言いにくいとは思うんですよね」

後藤「う〜ん…。結局、論拠は “経済が” っていうね」

平野「 “基本的にはなくなったほうが良いと思うけど”とか、そういう言い方になるっていうか」

後藤「それもまた不健全な気もするんですけどね。どちらもちゃんと言えたらいいのにっていう」

平野「う〜ん…」

竹中「ただ、やっぱり電力の問題とかって隠されているものとかいろいろあって、明確に自信を持って足りる!今後も大丈夫!って言えるひとは少ないと思うんです。やっぱり日本的な感覚で “今のところはまだ” とか、判断留保しているひととか、曖昧なひととかの割合が多いと思うんです。ドイツとか結構バッサリと脱原発みたいにいっちゃったと思うんですけど。その辺が日本的な部分なのかなって。明確な原発維持・推進ってひとは本当に少ないはずなんです。そのグラデーションの幅が広過ぎるんじゃないかなって、反原発と推進で。例えば、実際に7割8割とか言われてますよね、反原発/脱原発のひと。だけど、そのなかの何割かはまだ明確に言い切れないっていうのがあるんじゃないかな、単純に」

声を上げることについて

黒澤「多分、デモの存在は分かるけど、デモや抗議に行くっていうことが頭にないと思います、大体のひとが。知識もないだろうし。海外でやってるみたいな、遠くだしみたいな」

竹中「身近なものじゃないからね」

後藤「確かに。参加するきっかけって難しいですよね」

平野「そうですよね」

後藤「僕はなんとなく、もうそろそろ行かなきゃなって思ったんですよね。もちろん、再稼働うんぬんというのは議論されるべきだと思いますけど、いくらなんでも大飯原発の再稼働に関しては拙速極まりないというか。安全対策の工事が済んでいないようなものを、とりあえず工事が終わるまでに事故が起きないだろうっていう見立てで動かすって本当に信じられないというか。それで、これは首相官邸前に行かなければ!って思って僕も行ったんですけど。現場で本当にマイクを取らなくて申し訳なかったんですけど…」

平野「そうですね(笑)」

後藤「僕、Twitterで何でアンタみたいな有名人がマイクを取らないんだって言われたんですけど(笑)」

一同「(笑)」

後藤「僕はもう少し、あの場所で語るときには、ちゃんとやれないといけないなと思っているんで。自分の中から強い言葉が出てくるまでは…、握るのに決意がいるんですよね。マイクを握って仕事しているから。ただ、マイクを握って官邸に“恥を知れ!”って言いたい気分でしたけどね。本当に、みなさんに代弁していただいて。ただあれ、お里が出るのが面白いですよね、それぞれの」

竹中「自分も最初の頃は絶対マイクなんか握りたくなかったですけどね(笑)。他の場所でも抗議してて、 “やって下さい”って言われたんですけど、俺はいいですって。何でかっていうと、罵倒しか出ないっていって。ずっと嫌がっていたんですけど…。経産省前で抗議をし始めたときに、間が持たなくなってしまったんですよね。一応、進行をやるようになって、そうなると自分でしゃべるしかない。USTで観ているひとに抗議に品がないとか言われたりして(笑)」

後藤「まあ、その辺は、もうひとつの課題かもしれないですよね」

平野「本当に、それは試行錯誤しているってのがあると思うんですよね。3.11以前から反原発運動をやってるひとがたまにスピーチをするんですけど、絶対に下品な言葉は使わないんだけど、すごい怒りをぶつける抗議をされるんですよね。僕らは最初、ガーってぶつかりに行ってるだけだったんですけど、今後ずっとこのテンションで行くのかっていったら、多分そうではないと思うんで」

後藤「なるほど」

竹中「ただ、基本怒りであると思うんで。別に平野さんを否定するわけじゃないですけど、いろいろあっていいと思うんですよね。それでも抗議行動なので、抗議をして欲しいなってのは単純にあります。内々に向かったりだとか、脚光を浴びるためにウケを狙っちゃうものとかは正直あんまり、どうかなってのがあるんですけどね」

後藤「抗議はやっぱり聞いていても、グッと入ってくるひとと入ってこないひとがいますね。素晴らしいスピーチだなって思うひともいるし」

平野「最近、マイクを列の後ろのひとに回してるんですよ。それは結局、首相官邸の正面のところが下手したらステージみたいになってしまっていて、要はわざわざ前に出てしゃべりたいひとは来るんだけど、逆にUSTに映りたくないとか、前に出てしゃべるのは…みたいなひとがなかにはいるので。後ろにマイクを回してみると、語る言葉を持っているひとが沢山いて。運動慣れしていないひとたちに、むしろどんどん声を出してもらうように今はなってきていて。そういうことは今も試しています」

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竹中

平野太一(ひらの•たいち)

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竹中

竹中亮(たけなか•りょう)

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黒澤

黒澤亮一(くろさわ•りょういち)

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