HOME < 今泉亮平さん×木下理樹×後藤正文 -Thinking about our energy vol.0.5

今泉亮平さん×後藤正文

独占されているエネルギー

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後藤 「実際どうなんですかドイツは? 例えば日本だったら、発送電の分離だったりとか、色々なことが問題になってるじゃないですか? ヨーロッパだったらいろんな国が繋がっていて、無駄なく電気を融通し合っているようなシステムがある中、日本は各地に電力会社があって」

今泉 「日本はこんなに狭いところで、50サイクルと60サイクルとに分かれてるでしょう。その間だって、電気のやりとりは制限されてしまう」

後藤 「無駄がありますよね。ドイツは電力会社がいくつもあるんですか?」

今泉 「ドイツは、地域に大きなエネルギー会社があって電気もガスも一緒にやってるんですよ。もちろん、対立する会社もありますし、それが自由競争の形になってるわけですね」

木下 「ひとつが独占することはないかな。そのシステムがやばいってことが、過去の経験からわかっているから」

後藤 「過去の経験っていうのは?」

木下 「つまり、一党独裁ってこと」

後藤 「そういうところに発想は戻るんだね」

今泉 「そういう形で国民の意思がエネルギー政策に反映されるようなシステムになっています」

後藤 「日本はないですもんね」

今泉 「日本は今は地域独占ですから」

後藤 「かなり大きい顧客だけ、電力会社を選んで購入できる制度もあるって聞きましたが」

今泉 「大きい事業所には『入札』って言って、例えば東北電力や北海道電力が東京の会社に電力を売ったりすることが可能になってきてます」

後藤 「東京の立川市は、再生可能エネルギーの会社からを買っていると聞きましたが」

今泉 「グリーン電力ですね。多少できるようになってきてますね。ただ、グリーン電力の量自体も電力会社の都合で変えられるわけですよ。今度、再生可能エネルギー促進法ができるとすれば多少緩和されるでしょう。僕も再生可能エネルギー促進法の内容を全て知っているわけではないですが、電力会社がいろんな事情で買取を拒否できる項目があるっていう話ですから、誰もが発電に参入できるっていうわけではなくなる可能性はありますよね」

後藤 「例えば、ゴミ処理場なんかはゴミを燃やしているから発電できるけど、いろんな理由をつけて送電網への接続を電力会社が断るんだっていう話を聞きました」

今泉 「現在は、RPS法って呼ばれている法律があるんです。要するに電力会社が発電社と話し合って値段を決めて買取ができると、そういう法律なんですね。今でも一応形としては売買できるようにはなっているんですけど、ただ電力会社が一方的に “おたくの電気は、3円、4円です”とか、非常に安い値段を決めてしまったら、発電側は採算が合わないじゃないですか。諦めるしかなくなる。だからこのままでいくと、いつまでたっても電力会社の独占になって。競争相手が増えたら困るわけだから、潰しにかかりますよね」

木下 「そうですよね。だから、同じ民主主義でも日本とドイツだと全然違うんだと、すごく思いました」

今泉 「日本は、エネルギー民主主義じゃないんですよ、独占主義ですから。エネルギー社会主義ですね」

後藤 「特に電気に関しては」

今泉 「ガスだって、ほとんど独占みたいなものでしょう。石油にしたって大手が何社かで、エネルギー関係は規制がたくさんありますからね。なかなか新たな業者が参入してってわけにはいかない」

デモの必要性を考える

木下 「それからドイツは、ストライキとか、とにかく市民の力が強いし、政治への意識がすごく高い。ひとりひとりの政治への意識が高いから、デモとかでも相当なデモの数じゃないですか?」

後藤 「何万人?」

今泉 「十万人くらいすぐですよ」

木下 「ドイツってすぐデモ起こすから。そしたらね、ストップしますよ。警官に誘導されるようなデモじゃないから、警官と争ってでもするから」

後藤「何十万人のデモが自発的に起こるってことが凄いね。しかも、警察に申請するっていう日本のスタイルとまた違うっていうね。警官と揉めてるとこは見かけてない?」

木下 「何度も見かけたよ。“デモってそういうもんでしょ” って感じだった。日本とは全然違うかな」

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後藤 「日本だとデモをしている側の方がおかしな人達みたいな捉え方は、僕も含めてまだ少しはあるかなって。だんだん僕も考え方が変わってきたんだけど、デモに関しては。参加してみようかなっていう気持ち」

木下「そうだよね、だから意味だよね。まずデモを起こす意味は何なのか?っていうね。例えば、僕が見た東京のデモっていうのは、すごくピースなデモだよね。警察に誘導されて“イェーイ”みたいな感じでね。終わって、“はい解散です” って言ったら解散するような。そんなので変わるのか? とは思う。でも、やらないよりはましって言われたら、やった方がいいのかもわからないけど、そういうことじゃないでしょって疑う心はやっぱりあるよね」

後藤 「一方で、以前のアルタ前のデモの演説では、どうしてデモをやるかってことに関しては、 “デモをやることによって、デモを行う社会になる、そのためには今デモをやることが大事なんだよ”って話しを聞いて、すごく腑に落ちたっていうか。例えば、原子力発電所を止めるっていうこと関して言うと、今やっているデモが果たして直接的に作用するかどうかはわからないけど、デモを行うっていう気運が国中に高まっていくと、またそれが強い力を持ってくるのかなって。10年後20年後のことを考えたら、今デモをやらなきゃいけないんじゃないかっていう」

木下 「むしろね」

今泉 「そうですね」

後藤 「うん。そういう気持ちに初めてなった」

木下 「そういう意味でのゴッチの意見には賛成ではあるね」

後藤 「効果は考えなきゃいけないとは思うけどね。田舎の人から見たら、東京で何か騒いでるってくらいにしか見えないだろうし、そういう報道しかされないだろうから。ドイツのように、人々が当たり前に政治に注目して、当たり前に不満があるならば行動に移すような社会にしていくにはどうしたらいいんだろうって考えていかなきゃいけないなって思う」

木下 「そうだよね」

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今泉亮平

今泉亮平(いまいずみ・りょうへい)

1941年東京生まれ。戦災の残る東京で幼少年期、復興期に高校、大学を過ごし、高度経済成長期に就職。40歳で独立しドイツ企業の代理店業務をスタート。90年に廃棄物処理プラントに関わり、95年にバイオガスプラント業務をスタート。石油文明隆盛の中で生き、その贖罪として余生を再生可能エネルギーの普及を願い友人たちと2006年にNPOを立ち上げ活動中。孫が成人する頃の100%自然エネルギーの社会を夢見る。
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木下理樹

木下理樹(きのした・りき)

'78年10月生まれ、大阪府出身。ART-SCHOOL、killing Boyのボーカル、ギター担当として活動している。ロックに限らず幅広い音楽に精通し、映画好きとしても知られる。2010年、ART-SCHOOLは結成10周年を迎える。2011年12月29日(木)の『COUNTDOWN JAPAN 11/12』のステージをもって、宇野剛史(b)と鈴木浩之(ds)が脱退することが先日発表された。
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