バイオガス発電は日本の食品廃棄物の問題とも密接に関わっている。国内で発生する食品廃棄物は、年間2,775万トン(2014年)に達し、そのうちまだ食べることのできる「食品ロス」は621万トンにのぼる。食品廃棄物は水気が多く含まれるため、簡単には焼却することができない。全国のほとんどの自治体では化石燃料を使用して燃やし、二酸化炭素を排出させてしまっているのだという。
農林水産省・環境省・消費者庁もこうした無駄を抑制すべく、食品リサイクル法を2000年に制定。コンビニエンスストアやスーパー、飲食店などから出る廃棄物を有効利用するための施策を講じてきたが、有効利用されているものはわずか400万トンにとどまる。
その大きな理由のひとつが、リサイクル施設そのものの不足だ。食品廃棄物をリサイクルし、エネルギーまで生み出すバイオガス発電所はその救世主となり得るが、プラントを作るには数十億円もの建設費用がかかることもめずらしくないのだ。
実際、牧之原のプラントも約20億円を投じて建設された。しかし、国や自治体からの補助金などに一切頼ることなく、すべてを民間からの資金調達によってクリアしている。補助金なしのバイオガスプラントの建設は全国初。なぜそれが実現できたのだろうか。
「やはり、食品リサイクル法、そして固定価格全量買取制度(FIT)が施行されたことが大きいと思います。ここは中部電力からの売電収入のほか、それぞれの工場から食品廃棄物を引き受ける段階で、廃棄物の処理料を徴収しているんです。つまり、お金をいただいて原料を仕入れているので、回収コストが最低限に抑えられるわけなんです」
これによってプラント建設にかかった初期投資の回収期間も約10年程度に短縮でき、事業に賛同してくれる民間企業も投資しやすくなったという。
「また、立ち上げに関わった中心メンバーに、廃棄物処理、プラント設計、ファイナンスの専門家がいたので、一般的な廃棄物処理業とは違った角度から事業を組み立てることができたのも大きかったと思いますね」