以前ジュークボックスを所要していたほど、アナログレコードには、相当な拘りを持つChocolat&Akito。ふたりを魅了して止まないレコードの魅力からオリジナル盤の音の違い、海外の音楽ファンのリスニングスタイルまで、レコードへの愛情をたっぷりと語ってもらった。
――レコードとの出会いって覚えていますか?
片寄「僕はレコードの世代なので、物心ついたときには家にありましたよね。当時は家具調の大きなステレオがある家も多かった時代で……あれはいとこのだったのかな? うちは親戚とかも一緒に住んじゃうような大家族だったので、誰かが持ってきたんでしょうね。そこにあったマーヴィン・ゲイやアメリカン・グラフティのサントラとかを勝手に聴いたり、友達と当時流行ってた沢田研二の『勝手にしやがれ』とかピンク・レディーのレコードを聴いてましたね。自発的にレコードを買って聴いた記憶としては、映画『未知との遭遇』のサントラかな。小学校3,4年くらいだったと思うんですけど。LPレコードでしたね」
ショコラ「私は、ちゃんと“これがレコードだ”と意識して聴いたのは、結婚してからです。母親がビートルズ好きだったからレコードはあったし、プレイヤーもミニコンポに付いてたから、それで聴いたりはしてたけど。やっぱり明人と知り合ってからですよね。それでジュークボックスの音を初めて聴いて……」
片寄「昔、ジュークボックス持ってたんですよ。セルジュ・ゲーンズブール(※1)とジェーン・バーキンの映画『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』でジェーンの働いてるお店にあったのとまったく同じ、カプセル型のAMI Continentalっていう機種を持ってて。映画『ゴースト』にも同じのが出てきてたね。7インチのレコードが100枚入るやつ」
ショコラ「私はその音にビックリしちゃったの! 迫力とか生々しさとか、もう聴いたことがない音で……“あ、これがレコードの音なのか!”っていう衝撃がありました」
片寄「ジュークボックスは、50年代、60年代にお店で流行りの音楽を大音量で流して、みんながその周りで踊ったりしたものだったから、今でいうクラブの役割も担っていたのかもしれないね。モータウンではスタジオにジュークボックスを置いて、ミックスのときにそこからどう聴こえるかをチェックしてたって聞いたことがあるよ。それだけ当時のポップス〜ロックンロールにとってはラジオと並んで重要なメディアだったし、今でも当時の音を体感出来るタイムマシーンのような魔法があるよ」
ショコラ「踊れる音でしたよね。アンプは真空管だったし、今でも忘れられない音です」
片寄「うちの親とか今でも“ジュークボックスの音は良かった”って言ってるよ。銀座の歩行者天国とかにジュークボックスが置かれてて、当時その周りで踊ってたらしいんですよ。プレスリーとか『ロック・アラウンド・ザ・クロック』とかね。“その音が忘れらない”って言うんです」
――ショコラさんは、それ以前は、やっぱりCDで聴いてたわけですね。
ショコラ「それまではCDのほうがメインでしたよね。CDウォークマンとかで。だからそういう音は知らなかったです」
片寄「僕は昔からレコードは大好きで、アナログでしか聴けないレアなものは買ってたんだけど、音質にはそんなにこだわりはなくてね。聴ければ再発盤でもCDでも全然OKだったんです。それがある日、アナログレコードのオリジナル盤で聴くと、CDでは立たない鳥肌が立って、感動で泣きそうになることが頻繁にあるのに気がついて……まぁ、これはCD以前、80年代までの音源に顕著なことだったんだけど」
ショコラ「そうだね。それで突然、オーディオに凝りはじめたんだよね(笑)。シカゴでレコーディングするようになってからじゃない?」
片寄「そう、2000年代のGREAT3は、シカゴに飛んで、トータス(※2)のジョン・マッケンタイア(※3)のSOMAスタジオでずっとレコーディングしてたんです。そこに彼の盟友エンジニアでケイシー・ライス(※4)っていう、リズ・フェア(※5)やベン・リー(※6)のエンジニアもやってる、ジョンの兄貴分みたいな人がいて、毎日僕らのレコーディングにも遊びに来てたんだけど、ある日、彼がメルボルンに移住するからさよならパーティーをすることになったんです。ちょうど僕らがレコーディングしてるときでね。スリル・ジョッキーのオーナーのベティーナ――彼女はサム・プレコップ(※7)(ザ・シー・アンド・ケイク(※8))の奥さんだから彼の家でもあるんだけど、そこがパーティー会場。行ってみたら最高にカッコいいニューウェイブが強烈な音で流れててね。驚いて“これ誰の音楽だ!?”ってサムに聞いたら“トーキング・ヘッズ(※9)のレコードだよ”“ええっ?これ昔持ってたけど、こんなに良かったっけ!?”っていう衝撃のやり取りがあってね。そしたらサムが”オーディオが大事なんだ”って言っていろいろ教えてくれたんです。彼はかなりのマニアでね。そしたらジョンもその話に入ってきて……シカゴの友人はQUADやNAIM AUDIOなどのブリティッシュ・オーディオ・ファンが多いってことがわかった。で、実は僕も子供の頃からスピーカーは英国のCelestionが大好きだったから、もしかして…と思って、アンプやプレイヤーも彼らの薦める英国製の機材を揃えて聴いたら、最高に好みの音でね。今まで聴いてきた盤もまるで別ものに聴こえるもんだから、もう一度あらためて音楽にハマっちゃった。こんな音が入ってたんだ?こんな良かったんだ? って。そこからですね、新たな泥沼が始まったのは(笑)」
――(笑)泥沼というのは、つまり?
片寄「研究の末、やっぱりオリジナル盤の音がすごいってことに気が付いちゃったんですよ(笑)。僕、解説読むのも好きだし、昔から日本盤が好きだったんですけど、オリジナル盤とのあまりの音の差に、ほんとショックを受けて。全部買い直しです(笑)」
ショコラ「そこから聴き比べをするようになったよね? セックス・ピストルズ、ザ・フー(※10)、ビートルズ……『イギリスのバンドはやはりイギリス盤がいい』という発見があったりね(笑)」
片寄「うん。ニール・ヤングとか、ジョアン・ジルベルト(※11)とかのブラジルものも各国盤を聴き比べしたね(笑)。ショコラはこの部屋のイスに座って、ひとつのアイテムでもアメリカ盤とイギリス盤と日本盤、音の聴き比べをさせられることに(笑)。でもあれで耳が鍛えられたよね? やっぱり基本的に産地というか、本国で作られたものが一番ミュージシャンの意図を反映しているように感じましたね。要はアナログレコードって、国によってCDで言うところのマスタリングが違うと考えてもらっていいんです。国によってカッティング・エンジニアが違いますから。ミュージシャン本人が立ち会い、もしくはチェックしているのは本国のオリジナル盤だけですからね、そこに強さを感じるのは確かです」
ショコラ「あと、モノラル針とステレオ針っていうのもあるからね(笑)」
片寄「そう。モノラル盤はモノラル針で聴かないと、その真価は発揮されないんです(笑)。とにかく、その好みの音響で聴くアナログ盤の体験が強烈で……またレコードに夢中になったのが、GREAT3の活動休止以降だったんです。タイミング的にプロデューサーの仕事を始めた頃だったから、フジファブリックとかSISITER JET、Anyとか僕がプロデュースしたバンドや音楽仲間もよく家に遊びに来ては、みんなここで口をあんぐり開けてレコードの音を楽しんでました(笑)」
ショコラ「そうそう。みんなビックリしちゃうんだよねえ」
片寄「志村(正彦)くんも、すぐにプレイヤーが欲しい!って言うから、うちで眠ってたアナログプレイヤーを譲ってあげたね。みんなにレコードのいい音を聴く喜びを教えたいというか……まあ俺ほどマニアになる人は、そんなにはいないけど(笑)」
ショコラ「相対性理論の永井(聖一)くんもうちの音に感動しちゃって、オーディオも揃えたって。CDはなるべく買わずにレコードを買って聴いてるって言ってたよ」
片寄「それは聞いてなかった(笑)。僕はプロデューサーとしての活動をしていく中で、音質っていうものについて、さらに深く考え出すようになったんです。それは録ることもそうなんですけど、聴くことについてもです。そして僕はCDよりもレコードのほうが何倍も心地良く、音質も良く感じるいうことに気が付いたんです。あくまで僕個人の趣味ですけどね。でもレコードのほうが物理的にCDよりも情報量が多いことは確か。そこでCDというメディアには限界があるのかもしれないなと思ったんですけど、でも腕のいいマスタリング・エンジニアならCDの中にも感動を封じ込めることができる。それは配信でもそうですね。フーとかヴェルヴェット・アンダーグラウンド(※12)などのロックやソウル、ジャズの名盤を24bit/192kHzというCDを上回る情報量で配信しているものを聴くと、感動で鳥肌が立つこともあります。それはレコードとはまた違う音の良さなんですが」
――それからレコードには、アイテムとしての楽しみもあると思うんですけど。
片寄「そうですね。綺麗にしたレコードをプレイヤーに乗っけて、針を落として、で、また終わったら針を上げて……そういう一連の儀式的な行為にも魅力を感じます。どうやら僕はレコードを磨いているとき、一番幸せそうらしいんですよ(笑)」
ショコラ「癒されるらしいです(笑)。無心で、何もしゃべらない」
片寄「あとジャケットがデカいのもいいでしょ?」
ショコラ「そうそう。好きなアートワークが大きく見れるのは嬉しいし、飾っててもかわいいよね」
――たとえばどんなレコードです?
片寄「僕がレコード棚に面出しして飾るのは、わりとそのときの旬ですね。マルコス・ヴァーリ(※13)にハマってるときは――」
ショコラ「もう全部マルコス・ヴァーリで……それに気付いたとき、ちょっと怖かった(笑)。あと全部チェット(・ベイカー)(※14)のときもあったりしたね」
――やっぱりアナログ世代のアーティストになりますか。
片寄「そうだね。でも'09年にシカゴに行ったときに、向こうのレックレス・レコードっていうお店の女の子が言ってたけど、シカゴの若い子は6割アナログレコード、3割ダウンロード、残りの1割がCDで聴くんだって。一番人気があるのは、新譜でもアナログレコードで、しかもダウンロードのチケットが入ってるスタイル。もしくは、CDがおまけに付いているものだって言ってたな。シカゴにはスティーヴ・アルビニ(※15)という数々の名盤を作ったエンジニア・プロデューサーでもあるミュージシャンがいるんだけど、彼はシェラック(※16)っていう自分のバンドが新譜を出すときは、昔からアナログ盤のおまけに同内容のCDを付けてたね。あれは嬉しいサービスだった。僕も最近、新譜は基本的にアナログで買うようになりました。フリーでデータが付いていることが多いし、やっぱり一番音の良いメディアで聴きたいから」
――で、おふたりはアーティストでもあるわけで、そうなると作品をアナログでも出したいと思いますよね?
片寄「レコードを出したいという欲は常にあります。だからアジカンがアナログ出してるのはうらやましい限りですよ(笑)。でもついに今回、ショコラ&アキトでアナログが出せることになりそうで、いま準備中なんです。ショコラ&アキトの新作『Duet』は金沢の『Rallye』っていうインディ・レーベルからのリリースなんですが、彼らはそういうことにすごく理解があってね。僕らのファンからもアナログでぜひ聴きたいっていう声があったから、じゃあやろうかっていうことで。アナログは、マスタリングからカッティングまで全ての行程をアメリカのロジャー・シーベルというエンジニアが担当したから、AUTORAの山本アキヲくんがマスタリングしてくれたCDとの質感の違いも楽しめると思うよ」
ショコラ「聴き比べができますよ(笑)」
――メディアによって音質が違うわけですね。
片寄「そう。だから大元のマスターは自分が思う最高の音であるアナログハーフのテープで残したいけど、最近はテープも生産中止でなかなかそれも叶わない。だからデジタルでも24bitでサンプリングレートもなるべく高く、後に高音質配信やアナログ化に耐えうるクオリティで残したいとは思ってる。でも、中には“MP3の音が一番いい”って言う人もいるんですよね。それは音楽の種類やリスニング環境にもよるし、個人の嗜好の違いですから全然構いません。手軽で便利なことは確かだし。でも僕は良い音質で音楽を聴く快楽を知ってしまったからね。自分の良心に逆らうことなく仕事をしたいって思ってます。 そう考えてみるとレコードって、ものすごく良くできたメディアだな。ポータブル・プレイヤーから高級ハイファイまで、どんなリスニング環境でもいい音で鳴ってくれるし、かつ、ガッツがあってエモいんですよ。特にロックンロール・ミュージックを聴くには最高のメディアですね」
――じゃあ今後はどんなリスニング環境になっていったらいいと思います?
片寄「若い子には一度いい音でレコードを聴いてみてもらいたいなって思う。そういう体験が気軽に出来る場所があるといいんだけどなぁ。でもそんなに高い機材を揃えなくても、僕はCDよりレコードのほうが簡単に良い音を引き出せると思うんだ。それにアナログレコードって、盤質や初回盤にこだわらず、中古店を探せばCDよりずっと安いしね。たまにロック名盤が100円とか200円とか、嘘みたいに安い値段で買えるよ。アメリカではどの街でも音楽好きはアナログレコード好きだって印象があるんだけど、特に若い連中がアナログレコードを聴いているのは、安いからという理由も大きいんだと思う。それに80年代後半、アナログからCDへとメディアが移行したとき、日本と違ってアメリカじゃアナログプレイヤーを手放さなかった人が多いみたいなんだよね。まあ家が広いというのもあるんだと思うけど」
ショコラ「レコードは音が深く感じるんです。特に7インチはすごいよね」
片寄「そう、レコードは盤面に対して収録時間が短い方が物理的に音質もいいから、シングル盤が一番音がいいんですよ。7インチ、12インチのシングルの音、大好き」
ショコラ「好きな曲のオリジナル・シングル盤をコツコツ集めてるんですよ。楽しいです。そういえば私も'09年ぐらいにデンマークの男の子と女の子を東京案内したことあったの。その子たちも言ってたけど、デンマークの若い子たちもレコード買ってるって言ってたな」
片寄「ショコラは、アメーバミュージックっていうサンフランシスコのレコード屋さんに行くの、大好きじゃん?」
ショコラ「あ、大好き! 1ドルコーナーがあって、そこから掘り出すのが大好きなんですよ。ジャケットにピンときたら直感にまかせて買います。失敗しても1ドルだったらいいじゃないですか? 楽しいよね。そう、それが楽しいっていうことを知ってもらいたいですね」
片寄「しかもあそこ結構遅くまで営業してて、夜中にお酒とか飲んだあとに酔っぱらいながら行くのが楽しいんだ(笑)。とにかく広くて、在庫も膨大。僕らの友人は、デヴェンドラ・バンハート(※17)や、ファイスト(※18)と仲が良いミュージシャンが多いんだけど、彼らにとってはこのアメーバが音楽の重要な情報源で、みんなここでバイトしたり、毎日通ったりしていたらしいよ」
――日本の場合はレコード・プレイヤー以上に、CDプレイヤーが普及しすぎた背景がある気がしますね。それで今やどっちも持ってない若い子も多いですから。
片寄「そうかもしれないね。でもその一方でGREAT3のjanみたいに、23歳でレコードばっかり買ってるようなマニアックな子も僕の周りには多いよ」
ショコラ「奈々子さん(=janの母親でアーティストの佐藤奈々子)がよく『ご飯食べに来て』って言ってくださるんですけど、奈々子さんが料理をサーブする横で、その雰囲気にピッタリないいレコードをjanちゃんが選んでかけてくれるの! キャンドルを用意して」
片寄「そういうスタイルが実に自然なんだよなぁ。janがすっと席を立って、ワインを開けて、お客様のためにレコードを選んで、かけるんですよ(笑)」
ショコラ「もうそれがね、“なんて素敵なおもてなしなの!”って思うんです。で、私たちもお客さんが来たときに、いつもレコードの上質な音でおもてなしするじゃないですか。で、明人は“この人はこういう音楽好きそうだな”っていうのを黙って選んでかけたりして、居心地のいい空間を作り上げてるんです。そういう楽しみを若い世代にも味わってほしいなって」
片寄「上質なものに触れると人の心は豊かになるからね。そういえばニール・ヤングがCDはもちろん、レコードをも上回る音質で制作したと豪語するブルーレイBOXをjanに聴かせたら、あまりの感動に突然ポロポロと涙をこぼしはじめたのには驚いた。でも嬉しかったな、自分も同じ歳ぐらいの頃にビーチ・ボーイズの『サーフズ・アップ』のオリジナル盤を聴いたときに押さえきれないくらいに感情が高揚して、やっぱり号泣したことを思い出した。いい音で聴く音楽には、それだけ人の心を揺さぶるパワーがあるんだよね」
ショコラ「それにレコードを聴くのはオシャレですよ! レコガール、カッコいいと思います(笑)」
The Velvet Underground & Nico
『The Velvet Underground & Nico』
大名盤なんだけど、超貴重なファースト・プレスのモノラル盤。20年近く前にハワイのパープル・ヘイズっていう倉庫みたいな小さなお店で20ドルで買ったんですよ。今の日本だったら10万円以上はするかも。この作品はモノラルで聴くのがベストですね。最後まで売らないアルバムのひとつ。
Russ Freeman & Richard Twardzik
『Russ Freeman Trio & Richard Twardzik』
リチャード・ツワージクという人のピアノがおもしろいんです。突拍子もないフレーズが突然出て、もう笑っちゃうぐらい。最初はCDで聴いてたけど、アナログもほしいとリクエストしました。Chocolat & Akitoで鍵盤弾いてるヒカシューの清水一登さんも「すごい!」って大興奮してましたよ。
Chocolat&Akito(しょこら・あんど・あきと)
夫婦でもあるショコラと片寄明人(GREAT3)によって'05年に結成されたデュオ。明と暗、その独特な詩世界を美麗なメロディで綴り、同年に『Chocolat & Akito』でデビュー。'07年に2nd『Tropical』、'12年11月には、3rdアルバム『Duet』をリリース。ふたりでの弾き語りから、栗原務、清水一登、石井マサユキを迎えたバンドセットでもライブを展開。片寄は、昨年GREAT3としての活動を再開、プロデューサーとしても数多くのミュージシャンを手がける。ショコラはアクセサリーブランドのデザイナー、CMナレーターとしても活躍中。マスタリング違いで音質にもこだわった『Duet』のアナログ盤も近日リリース予定
■注釈
(※1)セルジュ・ゲーンズブール
フランスの歌手、作詞家、作曲家、音楽プロデューサー。女優のブリジット・バルドー、ジェーン・バーキン、カトリーヌ・ドヌーヴ、イザベル・アジャーニらのアルバムをプロデュース。娘であるシャルロット・ゲンズブールのアルバム『魅少女・シャルロット』も手掛け、デュエットも披露。晩年にはヴァネッサ・パラディのアルバムも手掛けた。ソングライターとして、フランス・ギャルに書いた「夢見るシャンソン人形」を筆頭に多数の名曲を残した。1960年代の後半から1970年代にかけてフランスのポピュラー音楽において中心的な役割を果たす。
(※2)トータス
アメリカ、シカゴ出身のポスト・ロックバンド。'90年結成。徹頭徹尾、歌詞を介在させないインストのスタイル、ポスト・プロダクションを駆使する高感度の音響アプローチなど、極めて前衛趣向の強い音楽性と緻密な曲構成で知られる。'94年、1stアルバム『トータス』でデビュ-。3rdアルバム『TNT』では、当時革新的であったハードディスク・レコーディングを採用。演奏した音をテープに録音せず、初めからデジタル・コンピューターのハードディスクに記憶した音像をパソコン編集していくこのレコーディング方法は、電子機材による音楽制作方法への道を拓く画期的なものとしてシーンに衝撃を与えた。
(※3)ジョン・マッケンタイア
トータス、ザ・シー・アンド・ケイクのメンバーとしての活動に加えて、多くのミュージシャンのプロデュース、レコーディング・エンジニアとしても活躍。シカゴの録音スタジオ「Soma Electronic Music Studios」のオーナーでもある。片寄明人のアルバム『HEY MISTER GIRL!』('00年)、GREAT3のアルバム『When you were a beauty』('02年)、『climax』('03年)のプロデュース、Chocolat & Akitoのアルバムのミキシングなども手掛けた。
(※4)ケイシー・ライス
トータスのツアーPAやリズ・フェア、ジョーン・オブ・アーク、タウン・アンド・ カントリーらのプロデュースを手掛ける。ジョン・マッケンタイアと並ぶシカゴの顔的存在のエンジニア、ミュージシャン。
(※5)リズ・フェア
米国コネチカット州生まれの女性シンガー・ソングライター。シカゴの大学在学中にミュージシャンとしての活動を開始し、'93年にアルバム『Exile in Guyville』でデビュー。荒々しい男勝りな演奏と楽曲で、“シカゴのオルタナティヴ・クイーン”と称された。
(※6)ベン・リー
オーストラリア、シドニー出身。'92年に13歳でノイズ・アディクトを結成。ビースティ・ボーイズのマイクDに認められ、“グランド・ロイヤル”から1stアルバム『グランボー・ウッド』を発表。アコースティック・ギターと瑞々しい歌詞が話題となり、次々に作品をリリース。'03年にはベン・フォールズ、ベン・クウェラーとともにベンズを結成。
(※7)サム・プレコップ
シカゴ・シーンの重鎮、ザ・シー・アンド・ケイクのボーカルであり、ソロでも活動。また、画家、写真家としても活躍。
(※8)ザ・シー・アンド・ケイク)
シカゴで90年代半ばに結成。バンドは'04年から'07年までの間、活動を休止していたが、'07年に『エブリバディ』をリリースし、ツアーを再開。'10年10月には、ツアーに同行したブロークン・ソーシャル・シーンと共に特別シングル『スカイズ』をリリース。'13年、フジロックに出演する。
(※9)トーキング・ヘッズ
'74年に結成、'91年に解散したアメリカのロックバンド。初期はパンク/ニュー・ウェイブ・バンドとされていたが、ボーカルのデヴィッド・バーンがアフロ・リズムに傾倒し、それを大胆に楽曲に取り入れるようになると、ポスト・パンクと称されるようになった。'80年にアルバム『リメイン・イン・ライト』を発表。この作品は、アフリカン・ファンクとロックの融合という、それまでになかった新しい音楽の扉を開いた歴史的なアルバムとなり、トーキング・ヘッズにとっても音楽的に頂点を究めた最も重要な作品となった。
(※10)ザ・フー
イギリスのロックバンド。当初はスモール・フェイセスと並びモッズ・カルチャーを代表するバンドと評された。1969年にロック・オペラ・アルバム 『トミー』をリリース。この後『トミー』 は、'75年に映画化されるなど、ロック・オペラの名作として語り継がれていく。さらにロック・オペラ構想第2弾として、モッズをテーマにした『四重人格』を発表。'79年には、『四重人格』をベースに『さらば青春の光』として映画化もされた。
'04年に日本へ初来日したことは大きな話題となった。
(※11)ジョアン・ジルベルト
ブラジルの歌手、ギタリスト。ボサノバの創始者であり、ブラジル音楽の歴史を変えた孤高のマエストロ。'64年には、当時の妻であるアストラッドが英語で歌った「イパネマの娘」が、シングルとして発売された。これはジョアンのポルトガル語詩の部分がカットされたものだったが、皮肉なことにビルボードに96週間チャートインという記録を打ち立てるほどの爆発的なヒットとなった。'65年にはグラミー賞受賞。ベスト男性ボーカルにノミネートされる。
(※12)ヴェルヴェット・アンダーグラウンド
'65年に、ルー・リード、ジョン・ケイルを中心に結成されたアメリカのロックバンド。'67年に、アンディ・ウォーホルのプロデュースで、1stアルバム『The Velvet Underground And Nico』をリリース。このアルバムには、オリジナルメンバーに加えて、ニコが、ボーカルとして参加。活動中はヒットには恵まれなかったが、その音楽性はデヴィッド・ボウイやセックス・ピストルズなど後世のミュージシャン達に大きな影響を与えた。
(※13)マルコス・ヴァーリ
1960年代以降世界的ムーブメントとなったブラジル音楽を広めた立役者のひとりであり、日本でも高い人気を誇る、ブラジルポピュラー界の作曲家。名盤揃いのマルコス・ヴァーリだが、そのなかでも評価が高いのは『シンガー・ソングライター』('65年)、『サンバ '68』('68年)、『マルコス・ヴァーリ』('70年)、『プレヴィザォン・ド・テンポ』('73年)。
(※14)チェット(・ベイカー)
ジャズ・ミュージシャン。ウエストコースト・ジャズの代表的トランペット奏者であり、ボーカリスト。代表作は、'56年に発表された『チェット・ベイカー・シングス』。
(※15)スティーヴ・アルビニ
アメリカのレコーディング・エンジニアおよびミュージシャン。80年代後期以降のオルタナティヴ・ロック/アンダーグラウンド・ロックシーンを代表する名エンジニアとして活躍している。エンジニアとしてはニルヴァーナの『イン・ユーテロ』、ピクシーズの『サーファー・ローザ』やスーパーチャンク、モグワイなどの作品における仕事で知られている。
(※16)シェラック
プロデューサー / エンジニアとしての知名度が高まる中で始動したスティーヴ・アルビニの第3のバンド。'07年に、7年ぶりとなる新作『Excellent Italian Greyhound』をリリース。
(※17)デヴェンドラ・バンハート
テキサス州ヒューストン生まれ、ベネズエラで育ちのシンガー・ソングライター。'02年に1stアルバム『Oh Me Oh My…』をリリース。“1930年代の音のよう”と形容される土着的な オルタナティブ・フォーク を展開し注目を集めている。自身で手掛けたアートワークがグラミー賞にもノミネートされた'09年の作品『What Will Be』以来となる、新作『Mala』を2013年3月にリリース。
(※18)ファイスト
カナダの女性シンガー・ソングライター。ハスキーな声で歌うフォーキーな作品群はジョニ・ミッチェルにも比較される。'07年、3枚目のアルバム『The Reminder』発表、同年7月のフジロックに出演。この年、アップルiPod nanoのCMに「1234」が起用され話題を集める。'08年の第50回グラミー賞では「最優秀新人賞」「最優秀女性ポップ・ボーカル」「最優秀ポップ・ボーカル・アルバム」「最優秀短編ミュージックビデオ」の4部門でノミネートされた。