東日本大震災という大きな出来事を経験した私達は、これからどんな“未来”を作っていけるのでしょうか。「THE FUTURE TIMES」では、これから時間をかけて、様々な人の声を紹介していきます。それぞれ手がけるフィールドは違っても、同じ時代に生まれた同じ世代では、通じ合うものがある——俳優や映画監督としても活躍しながら、“これまでの我々人間の「生活」がもたらした地球環境や社会環境を見つめ直し、未来における生活を新たなビジネスモデルとともに創造していくプロジェクト”=『REBIRTH PROJECT』を2009年にスタートさせた伊勢谷友介さんに、人類が地球で生き残るためにはいったい今何ができるのか?について語っていただきました。
―REBIRTH PROJECTのスタートは2009年だったんですよね。早いですよね。
伊勢谷「コンセプトを思いついたのは8年前の27歳の時なんです。自分の初めての監督作『カクト』の公開が終わった頃ですね。僕は大学時代から映像の勉強をしていて、ずっとやりたいことは映像での表現だったし、俳優としてデビューしてからも映像の中での表現をやってきているんですよね。だけど、映像の表現だけではいつまで経っても虚像でしかなくて、より強くこの社会を次のステージに押し進めるためには、虚像だけではなく、実像を同居させる作業をやっていきたいと思ったんです。それがREBIRTH PROJECTという会社でやってみようと思ったきっかけでした。」
後藤「なるほど」
伊勢谷「だから僕はこの活動を「俳優」という観点では考えてないんですよね。俳優を除いたら、僕は一人の個人であり、周りにはそういう想いを少なからず持っている仲間たちもいる。だからそれを団体として提案してみようと思ったんです」
―あらためて、REBIRTH PROJECTのコンセプトについて教えていただけますか。
伊勢谷「REBIRTH PROJECTでは、『人類が地球に生き残るため』という理念を掲げています。僕たちは自然の大いなる循環の中のひとつの生命体なので、その循環の中で、自分たちが生きることのできる環境を続けていくことが、生物として生まれた以上、ずっと変わらない目的というか、必要なことなんですよね。だけど今の人間の生活サイクルを続けていくと、地球の人口、70億人をまかなえるほどのものではすでにないことがわかっている。だから僕らは、生産物の効率化、継続性が可能な生産方法を提供していこうと、僕達の生活のサイクルの中に必ずあり続ける、『衣食住』の分野から、REBIRTH PROJECTをスタートさせたんです。だから、このプロジェクトを始動させること自体、洗濯とか掃除するとか飯食うとかそういうことと変わらない、当たり前のものだという気持ちなんですよね」
―ここに展示してある家具は、REBIRTH PROJECTの最初のプロジェクトで作ったものなんですよね。
伊勢谷「そうなんです。『THE SPIKE SHOW』というプロジェクトなんですが、最初にREBIRTH PROJECTが何をやりたいのかを分かりやすく形にするためのコンセプトワークとしてやったもので、住宅を取り壊した時に出てくる廃材を、クリエーターが関わることで作品や家具にして、もう一回家の中に戻すというアクションだったんです。普通、廃材は『ゴミ』と呼ばれて、燃やされて、二酸化炭素になるわけですが、そうではない素材の扱い方を提案しようとしたんです。その取り壊すところから、作品を作っていく過程もすべて撮影して、それをパフォーマンスの一貫として演出して、作品として見せています。これをやったことで、僕らが何をやりたいがわかってもらえたんじゃないかなと思うんですよね」
後藤「REBIRTH PROJECTが東日本大震災直後にスタートした『元気玉プロジェクト』は新しい試みだなと思いました。ホームページを見せていただきましたが、被災地の方々や被災地復興に向けて何かしたいという人達が、自分達で行動を起こすことができ、具体的にそのプロジェクトのためにお金がどう使われたかも報告されていますよね」
伊勢谷「『衣食住』にまつわる持続可能なものの物質的な提案だけでなく、概念的な提案というのがはじまっているんですよ。どうしても、自分一人のアクションではどうにもならないと思っている人も多いと思うんですが、少し想像力を働かせてもらえれば、本当は、みんな社会とリンクすることができるはずなんですよね」
後藤「そうですよね」
伊勢谷「この『元気玉プロジェクト』は、『マイクロパトロンプラットフォーム』というインターネット上の機能を使って立ち上げたプロジェクトなんですが、被災地の被災地による被災地のためのプロジェクトとしてスタートさせたんです。新しく企画を立ち上げたいと思う人が、サイト上で企画のプレゼンをして、そこに共感した人たちがその活動資金を五百円とか千円という少額から支援できるという仕組みになっています。今まで企画側はお金をどこから集めるかというと、大きい企業などからしか集めることができなかったんですけど、これに関しては一般の人たちが少額から支援できて、自分のお金がどう使われるかを見届けることができる。それはインターネットというツールを使えるということが大きくて、インターネットによって僕らが想いをコネクトして実行できるという事実は、昔の人間には持てなかったテクノロジーなんですよね。これを活用することで、“一人一人が想いを実行できる”。それは、僕は“自由を得ること”だと思っているんです」
後藤「はい」
伊勢谷「もちろんプレゼン能力は問われますけど、内容が良ければ、実際にたくさんの支援者がついて企画を実行できる。支援者がついた時点で、支援者に対して実行の過程をレポートしていくので、自由と同時に、責任も発生します。だけど責任が発生しない自由は自由だとは僕は思わないんです。こうやって互いに見合って関わっていくことで、応用力もついてくるし、それが人間の個としての成長にも繋がって、ひいては、人々の知識や意識も上がっていくと思っています。そういう提案が含まれているんです」
伊勢谷友介(いせや・ゆうすけ)
1976年東京生まれ。東京芸術大学美術学部デザイン科修士課程修了。98年『ワンダフルライフ』で映画デビュー。その後、映画、ドラマなど数々の作品に出演。また02年監督作品『カクト』を発表し、12年2月18日には2作目となる『セイジ-陸の魚-』が公開される。
09年『REBIRTH PROJECT』を設立。現在、『元気玉プロジェクト』他、萩市と組んだ地域再生プロジェクト「萩・維新塾2011 HAGInnovation『論』」を進めている。
http://www.rebirth-project.jp/