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FLAKE RECORDS presents “THE FUTURE TIMES Live & Talk”「RECORD STORE DAY」レポート

Talk Live

音楽配信サービスとアナログレコード

和田「今でもなんか、レコード買ってる人も結構いるっぽいですよね。ジャケットが良いからとか。アナログは買ってるけどプレーヤーを持ってない人は結構いると思います」

img001 チャーベ「今はね、ほら、ダウンロードがついた。だからそのままパソコンでも聞けるし」

和田「そうですね、ダウンロード・クーポン付きが多いんで。iPodとかでも聞けるし。でもなんか、メジャー会社は国(リージョン)の制限かけたりしますよね。まだね。ダウンロード・クーポンが付いてても、それこそSONYとかは、日本からダウンロードできないようになってんすよね」

後藤「そうなんですよ。俺もね、前にアメリカのバンドのアナログ盤を買って、アクセスしたらはじかれて(笑)。リージョン(※9)が違うからだめだって」

チャーベ「全部、できるわけではないんだね」

和田「契約上の話だとは思うんですけど」

後藤「そうなんですよ」

鈴木「あのね、本当ねレコード会社って今、いわゆる消費者、生活者目線じゃないんですよ、全然。だから本当にみんなが求めてるものって、一番快適に聞けるスタイルを取ればいいのに、それをしない。例えば『Spotify(総会員数2400万人、全世界有料会員600万人超)』っていうストリーミングで音楽を聞くサービスですけども、これも結局、いまだに日本に上陸できないと」

和田「あれはダウンロードしてしまうんじゃなしに、オンライン上で聞くっていう、なんでも聞けるっていう」

チャーベ「クラウドだね、もう」

img001 鈴木「レコード協会っていうのが、一生懸命、違法ダウンロードの反対キャンペーンをやって、ついに罰則規定(※10)まで作っちゃいましたよね。ダウンロードした側にも罪があるんだよって。そういうふうに罰則、押さえるようなことばっかりするんじゃなくて、例えば、『Spotify』みたいなサービスがあれば、違法ダウンロードなんて馬鹿馬鹿しいと思うわけですよ、リスナーは。しかも、アーティストにもきちんと分配される」

後藤「定額の音楽配信サービスですよね。月、いくらか払うと、聴き放題」

鈴木「月に10時間までは無料で聞けるんですね。それ以上聞きたい人は、当然10時間じゃ足りないから、恐らく、日本円で1000円未満を払うと1900万曲が自由に聴けます」

和田「カタログにある分が全部聞けるということ」

後藤「聴いた分は回数をカウントして、アーティストにもお金が入るっていう仕組みならば、すっきりはしてますよね。このあたりの話は、権利の問題も含めて、制度疲労みたいなのありますよね、いろんなところでね、本当に」

鈴木「もちろん日本でも、『レコチョク(※11) Best』とかSONYの『Music Unlimited(※12)』とか始まってますけれども、結局これも定額制がまずありきだから…。『ミュージックシェア』っていうのがあるんですけどね。“この音楽すごくいいよ”って、例えばツイッターとかFacebookで言っても、言われた側が会員でない限り聴けないわけですよ。これでは音楽が流行っていかない。ただ『Spotify』の場合は10時間まで無料だから、“いいよ”って言われた時にすぐ聴けるわけですよ。“あ、本当にいいね”っていうことでシェアされて、どんどん広がっていく」

和田「10時間まで無料か、それだったら聞きますね」

鈴木「そうなんですよ、そこがポイントなんですよね」

チャーベ「試聴感覚でね」

後藤「レコードは聴くまでが面倒かもしれないですけど、そんな面倒くさい聴き方を選ぶぐらい好き、みたいな人も増えたらいいなっていう願いがあります」

チャーベ「1996年にコーネリアス(※13)が、コロンビアのポータブルプレーヤー付きレコードを出したんですよ。機械を買って、もうソノシートがそこに置いてあって。すごい売れたんですよ、当時。96年かな。渋谷系まっただ中で。なんかそういうのを今後できたらいいな」

和田「それと、バイナルキラーっていう車のやつとか。レコードに置くおもちゃ。スピーカー付きのミニカーが動くんですよ、溝に沿って。で、音楽を鳴らしてくれるっていう。アーティストモデルとかいっぱい出てた」

チャーベ「すげえ、持ちたいと思うようなモノを作りたいよね。家にあってもかっこいいとか。僕が持ってきた、パパっと家で目についたやつは、こういう女の人のジャケットすごいかっこいいなと思って。かなり好きなジャケなんですけど。家にあったら置いときたいみたいな」

後藤「ファナ・モリーナ(※14)ですよね」

チャーベ「音もかっこいいんですよね」

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和田「僕のはベン・クウェラー(※15)っていうアーティストなんですけど。無駄が多いんですよね。レコードさえ入ってればいいんですけど、ジャケットがここまで広がる。で、これが箱になるんだけど、“だから?”なんですよね(笑)」

会場「(笑)」

チャーベ「“だから?”だ(笑)」

和田「もう1個Anthrax(※16)のレコード。曲が『Got The Time』っていう時計の曲で、ジャケを時計にしちゃおうっていう。これだってもう、宝物ですよ」

チャーベ「それすごい。10インチだ」

後藤「良いですね。素晴らしい。おばちゃんが詰めてるんですよね、それもね。内職のおばちゃんが(笑)」

鈴木「昔は、本当にデザイナーがジャケットにすごく凝ることができたんですよ。遊び心があったし、いろんなジャケット考えて、ジャケットからデザイナーとして一流になった人たちがすごい世界中にいる」

チャーベ「これとか例えば、ゴッチ君の撮った写真だったりとか。やっぱCDサイズよりこっちのほうが、うれしいよね、所有するという」

和田「持ってる感は時間がたてばもっと出てきます。10年前に買ったレコードとかのほうが、今、すごい愛着あったりしますんで。10年前にmp3を買ったのは覚えてないと思うんで。そういうのがいいかなと思ってますけど」

チャーベ「そうだね、iTunesの中で迷子になる曲、いっぱいあるよね。今、iTunesの中に1万曲ぐらいあるんですけど。なんか、忘れてて、聴きたいけどそもそも形がないから」

和田「タイトルを忘れてたりするじゃないですか、曲は覚えてても」

チャーベ「そう、タイトルも忘れてて、一応、星付けてんだけど、星も1000曲とかになってくるともうだめだなみたいな(笑)」

デジタルとアナログ。それぞれの良さを選ぶ

チャーベ「データって便利じゃない? 」

和田「否定じゃないですからね、僕らもね」

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チャーベ「自分たちも使ってるんで。なんだろう、洋服買うみたいな、洋服ってみんな買うじゃない? “着たいもの着る”みたいな感覚で。レコードもそうなるといいなと思ってて。持ちたいものを持つみたいな。格好良いし、可愛いしみたいな。そうなったらいいなと思って、魅力ある物を作ろうかなと思うんですけどね」

後藤「それがまず、作ってる側が最初にやることですよね。魅力的な物を、とにかく作るしかないですよね。“どっちがいいか?”っていうことになっちゃうのが一番まずいと思ってて。“レコード最高!”みたいな、“mp3はクソだ!”っていうのは、僕は違うと思うし」

チャーベ「二元論ではないもんね」

後藤「そうですよね、どっちも良いところがある。例えば、ネット配信なら、今日完成した楽曲をサウンドクラウドで直ぐ聴かせられるっていう良さもあるし」

チャーベ「ただそうなると、CDってすごく中途半端な存在になって、CDはなくなりそうだなと思って」

後藤「僕もどうやらCDはなくなるんだな感じています」

チャーベ「データかこういう物。物が欲しい人はこっちみたいな。どっちもそこは伸びていきそうな感じなんですけど、CDはなくなりそうだなあって。まず、あまり買う機会がなくなった」

和田「もう海外はそうなってますよね」

鈴木「全世界でね、一昨年と比べて昨年は30%アナログレコードが伸びてるんですよ。すごいですよね。日本もね一昨年に比べて去年のほうが、数%ですけど、上昇してるんです。だからアナログは復活していくなと思いますね。それは全部アーティスト発信でやってることですけどね」

後藤「マジョリティ(多数派)にはならないでしょうけどね。でも、音楽好きな人たちが、本当に自分が好きな作品はレコードで買うみたいな流れになったら、作ってる側としては嬉しいですね」

和田「1周回ってアナログに戻ってきてる感はあるので、絶対数は増えないと思うんですけど、ちょっと好きな人が増える。真ん中には来ないです、絶対」

チャーベ「作品感が手に取れるっていうのはデータではできないけど、これは作品だし、それはゴッチ君の写真が実際に紙にプリントされていて、物として持てる」

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和田「データにはないとこはそれですよね」

チャーベ「なんか、手にできる作品」

鈴木「そうそう。再生機器に『プレーヤー』って名付けたのはなぜかっていうと、これもアーティストの一員なんですよ。針を乗っけて溝を走って、それで倍音が出てくるわけですよ。これも1つのプレーヤーって名前が付いたのはそこからだっていうふうに聞きましたけどね」

後藤「入り口になっていくといいですね、レコードストアデイが。もうちょっとだけ、“マニアックだね”と言われようが、音楽を深く掘ってみようかなみたいな人が増えて欲しいです。一方では、『THE FUTURE TIMES』のインタビューで、石野卓球さんとかはレコードで音楽を聴くっていうのは“変質的な愛だよ”って言ってましたけどね」

和田「それもそうなんですよ、面倒くさいんで。家に持ってるだけでiTunesで聞くとか、置いてるだけっての普通にあります」

チャーベ「それはあるかも。ダウンロードコードでダウンロードして、すげぇ聴いてんだけどレコードはそのままとか(笑)。あとなんかね、逆パターンなんだけど、今ちょっと仕事で女の子の曲を書いてるんで、この間、ストロベリー・スイッチブレイド(※17)っていうイギリスの80年代のデュオを参考にしたいなと思って、レコードを聴いてたんですけど。女の子たちに聴かせるのにどうしようと思って、iTunesで全曲買いました(笑)」

後藤「僕はわざわざレコードで聴くのが好きですけどね。iTunesから作業場のモニタースピーカーへ繋いでmp3で聴くと、音が悪いのが分かってしまうんですよ。パソコンにヘッドホンやイヤホンを差して聴いてると差がないですけど、——本当は差があるけど、許せるみたいな。(笑)」

チャーベ「時々、ツイートしてるよね、夜。飲みながらなんか聴いてて、幸せ的なやつ。あれ、すごいいいよね」

和田「その作業は楽しいですよね、コーヒー入れてみたりとか、ビールを買ってきてみたりとか、わざわざ」

後藤「針を落として、“うわあ!”みたいな。“こんなに低音が鳴ってたんだ!”みたいな感動はありますよ。低音はやっぱりレコードのほうが太く感じます。高音のジャキっとした感じはCDのほうが強いですけど」

チャーベ「実は情報量は多いんだよね。mp3がものすごく端折られてるっていう、聞き比べると結構わかります」

後藤「携帯で写真を撮って、どんどん大きくポスターとかに引き延ばしていくと、画像が荒くなるじゃなくですか? 分かりやすく言えば、あれがmp3です。小さいぶんには分からない」

和田「お、納得した今(笑)」

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後藤「一番音質が良いのが、僕らがスタジオで採ってるそのままの音で。だから、将来的に音質が良くなるのはたぶんね、wavっていうファイル。もうちょっと情報量が多いやつがあるんで、それをそのままネット配信で届けられるようになると思うんですけど」

鈴木「 CDにすると16bitに落としちゃうから」

後藤「CDは16bit44.1kHz(※18)ですよね。マスターと同じ24bit48kHzっていうファイルでいければ。まあ96kHzとかで録る人もいますけどね」

和田「僕はそれをもらって結局、アップロードして海外に送ってレコードにしてもらってるんですけど」

後藤「そうですね、マスターの音源なんで、将来はそれを直接聴けるようになると思うんですけど。レコードはそのマスター音源を針で盤面に直接掘ってるんで、ちょっと音が変わるんですよね。なんていうんですかね、角がとれる」

チャーベ「丸みを帯びる。好きな音になるよね、でもね。自分たちが好きな音っていうかさ」

後藤「丸みが出てきますね。音と音の境界線がぼやけて、ぼやけてるっていうよりは溶けてる、“メルト”みたいなこと誰か言ってましたけど。溶け合うっていうか。だから音を上げてくと痛くないんですよ。高音は特に」

和田「まろやかっていうんですか、暖かみがあるっていうとこはそういうとこでしょう?大きい音で聞くと全然違う、本当に」

後藤「だから、クロマニヨンズとかは、1回レコードに掘ってから、データとして再生したものを取り込んでCDにしてるそうですよ」

チャーベ「ええ!カッティングするってことだ」

後藤「しかも、モノラルで。ダイレクトマスタリングって言ってましたけど。ビクターのスタジオでエンジニアの小鐵さんが針で盤面に掘って、掘った盤に針を落として、最初の再生音をデータとして取り込んで、デジタルマスターにしてCDを作るっていう。面白いなと思って、チャットモンチーをプロデュースしたときに一度試しました。でもちょっと、現在のJ-POPとかの流行りと比べたら、音が丸くなるんですよね」

和田「聞きようによってはこもってるって聴こえるかもしれないですけどね。パキッとはしない」

後藤「尖ってるところが丸くなって、そこがそのまま溶け合って、音としての厚みになってるようには感じるんですけどね。これも本当に好みの問題で」

チャーベ「データで特化した音楽も出てきてるじゃない? データだから良く聴こえる。アナログにしたらつまんないとか。だからそれはそのアーティストが選べばいいだけで」

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鈴木健士

鈴木健士

RECORD STORE DAY JAPAN事務局長・ミュージックソムリエ協会 理事長
2007年、NPO法人ミュージックソムリエ協会を設立。制作をほぼ辞めて、CDショップ大賞の立ち上げから運営、RECORD STORE DAY JAPANの事務局運営、Music Sommelier at CAYのイベント運営、またミュージックソムリエの育成講座を実施している。
ミュージックソムリエ協会
RECORD STORE DAY JAPAN

DAWA

DAWA(和田貴博)

大阪、堀江のレコードショップ『FLAKE RECORDS』の名物店長。店内には新譜を中心に輸入盤レコードやCD、日本のインディーズレーベルの作品などが取り揃えられ、その全てに自作の紹介文 が添付されている。インストアライブなども頻繁に開催。その他、レーベル運営やイベント企画など、勢力的に活動中。
FLAKE RECORDS

CHABE

松田“CHABE”岳二(まつだ“ちゃーべ”がくじ)

1970年、広島県生まれ。ソロ・プロジェクトのCUBISMO GRAFICO、バンド・スタイルのCUBISMO GRAFICO FIVE、キーボーディスト・堀江博久とのユニット、ニール&イライザ、DJ、リミキサーとして活躍中。また、FRONTIER BACKYARD、LOW IQ 01のライブバンドMASTERLOWのサポートも務める。2001年には、映画『ウォーターボーイズ』の音楽を手掛け、第25回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。渋谷Organ Banでのレギュラーナイト『MIXX BEAUTY』をはじめ、三宿Web他、CLUBでのDJで現場を大切にした活動を展開。

■注釈

(※9)リージョン

リージョン。地域のこと。
DVDやテレビゲームではリージョンコードが設定されていて、ソフトとハードのリージョンが一致しないと再生されない場合が多い。 音楽の場合には、どの地域で販売する権利をどのレーベルが持っているのか、契約上決められていることが多い。

(※10)罰則規定

著作権法を一部改正し「違法タウンロード」を刑事罰化することを内容とする法案。平成24年6月に可決。具体的には、目的であっても、有償著作物などの場合には、著作権または著作隣接権を侵害する録音物または録画物を、自らその事実を知りながら行って著作権または著作隣接権を侵害(ダウンロードなど)した者は、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することとされている。平成24年10月1日施行。

(※11)レコチョク

音楽配信大手のレコチョクが始めたスマートフォン向けの定額音楽配信サービス。国内3キャリアすべてに対応し、アプリが無償でダウンロード出来る。登録後2週間の無料試用期間も設定されており、月額980円で100万曲以上を聴くことができるサービス。

(※12)Music Unlimited

SONYがスタートさせた、月額980円で1300万曲が聴き放題という音楽配信サービス。ウォークマンやスマートフォン、iPhone、プレイステーション、タブレットやPCなどでも楽しむことができる。現在は30日間無料体験ができる。

(※13)コーネリアス

小山田圭吾のソロ・ユニット。1997年リリースの『FANTASMA』以降は世界に進出。先進的なサウンド・エンジニリアリングにより、ワールドワイドな評価を得ている。

(※14)ファナ・モリーナ

アルゼンチン、ブエノスアイレス出身のシンガーソングライター。女優。 2000年にリリースしたセカンドアルバム『Segundo』が日本で注目を浴びる。エレクトロニカやアンビエントなサウンドを導入し、「アンゼンチン音響系」として当時は紹介されていた。

(※15)ベン・クウェラー

アメリカのサフランシスコ生まれ、テキサス育ち。15歳の時にラディッシュというバンドでメジャーデビュー。現在はソロ活動中。2012年には通算5作目のアルバム『Go Fly a Kite』を自主レーベルからリリースし、来日公演も行った。

(※16)Anthrax

1980年代から活躍するアメリカのヘヴィメタルロックバンド。ニューヨークを拠点に活動。メタリカ、メガデス、スレイヤーと並んで「Big 4」と称されている。世界中にファン多数。

(※17)ストロベリー・スイッチブレイド

スコットランド、グラズゴー出身の女性ふたりによるポップデュオ。サイケデリックなメイクとドット柄の衣装で注目を集めた。代表曲は『ふたりのイエスタデイ(Since Yesterday)』。

(※18)16bit44.1kHz

bitが増えるほど表現できる情報量が増え、サンプリングレート(kHz)が多いほど、広い音域が音声波形を損なわずに標本化(デジタル)することができ、ノイズを抑えられるなどのメリットがある。