本宮市・30代男性(小学校教諭)
サポートしてくれる人がいる一方で、心ない方もいるっていうのが現状だと思うので、理解してもらうっていうことが一番必要なのかなって思います
—勤め先は福島市ですか?
「3月まで福島市の学校にいたんですけど、4月からは福島より南の本宮市のほうに通っています。本宮市は福島市よりははまだそうした、移動とか、そういったものが見られませんけど、やっぱり保護者さんの話を聞いていると色々な人がいて、全く気にしない、 “何でも良いから学校は行け” とか、 “別に普通に外で遊ばせても良いよ” っていう親御さんもいれば、 “ここは(線量が)高いしうちの子は出さないで下さい” っていう親御さんもいるんですよ。それで、様々なことがなされていて、学校の方でも放射線量を毎日測って、月ごとのデータとして出して、お便りにして渡してみたりとかっていうこともあります。で、実際に校庭を掘って埋めるっていう表土除去っていう作業を行って、かなり数値は落ちたわけですよ。現実として数値が落ちているので、今はもう子供たちを外で遊ばせています。かたや福島市で聞くと、やっぱりまだ外には出られないっていう話を聞いて。様々なものが多分出ていると思うんですよ、人によって受け止め方が全く違うので。皆が思っていることがバラバラな状態なんですよ。仲通りと浜通りで捉え方が全く違うので、凄く積極的に聞こうという人もいれば、そうでない人もいる。根本になっているのは正しい知識が分からない状態だからっていうことなのかなと思います」
—はい
「そして、誰も経験したことがないことなんですよね。放射線に関しても」
—確かに
「この程度だったらこうなるとか、それが誰にも分からない状態なんです。僕が個人的に思うのは、どの程度出ていようが今生きている状態の中で、例えば体に異変があるとか、何か病気になったとかということが早急に出てこない限りは、別に普通に暮らしていて問題ないんじゃないかなって思うときもあるんです。ほとんどの人が、もしかしたらそう思っているのかもしれない。ただ、やはり小さい子がいるお家とか、お母さん方が心配するのも同時に分かるんです」
—そうですよね
「何年後に出て来るかもしれないことのために避難するということが、それぞれの頭の中にあって。だから、そう考えると、どっちとも言えないんですよね。一概に悪いものだっていうことも言えないし。じゃあ、悪いものがあるからここを捨てて逃げるのが正しいのかって言ったら、決して地元のひとたちにとってはそうではないと思うんです。ここに大切なひとが沢山いるっていう人にとってみれば、そんなことは関係ないと思うんです」
—先生は独身ですか?
「独身です」
—小学校の話はとても難しいと思うんです。学校の問題は…
「とらえるほうの問題なので、なんとも言えないんですけど、今必要なことは恐らく、福島県の人たちを含めて全国の人たちが、やっぱり正しい知識を得るということが一番近道になるんじゃないかなとは思いますね。何がこの県を一番苦しませているのかっていうのは風評被害なんですよ。この福島県、 “福島”っていう名前の付いたもの、 “福島”っていう名前の付いた車、それに、その出身地っていうものを持っている人たちというのが一番被害を食らっているといえば、そういうことだと思うので。福島県をアピールするとか、そうではなくて、もっと周りの人が放射線について理解しようとすれば良いのかなとは思います。知らない状態で、危険だから来ないで下さいっていう気持ちを持っているうちは、多分、この県は何もできないと思うし、下手をすれば、この県はなくなってしまうかもしれない」
—はい
「住んでる人たちは一生懸命頑張ってると思うんですよ。復興っていう大きなお題目がありますけど。これをやっていこうとか、これを直していこうとか。そして、子供たちは子供たちなりに自分で楽しいものを見つけて、将来に夢を持って生きているわけだし。子供たちは詳しいことは分からないわけですよ。だから、子供たちだけでも避難させるではなくて、そこは大人がちゃんと教えていけないといけないことだと思うし。避難させるにしても、どうして避難したのかっていうのを必ず言っておかなくちゃいけないと思うんですよね。子供に一番大事なのは親だと思うし、避難するなら家族ごと避難したほうが正しいというか、やり方としては良いと思うし。ただ、仕事の問題もあるし、簡単には決断できない状態じゃないですか。まずは、周りの県のひとたち、もちろんサポートしてくれる人がいる一方で、そうではない、心ない方もいるっていうのが現状だと思うので、理解してもらうっていうことが一番必要なのかなって思います」
—どういう状況かということを知ってもらうということですね
「例えば、触っただけじゃ大丈夫だとか、そういう基本的なことから話していかないと分からない人もいると思うんですよ。遠くの地方の人からしたら、何がなんだか分からない状態だと思うので。そのままだと一生懸命やっている福島の人たちはずっと報われないままだと思うし。そうなったときに起こるのは何かっていったら、どうでも良くなってしまうと思うんですよね。それが一番怖いんじゃないかなと思うんですよね。この県の人たちがどうでもよくなったら、意味がないですからね。避難した子供が将来戻って来たいと思わないですもんね、そんな県に。考えてみれば。大人がやる気のないところに子供たちは戻らないし。どんどん出て行くだけだと思うし。いろいろな人の助けが必要ですけど、でも、我々も理解することだし、周りも理解することが必要なのかなと思います」
—ある程度、勉強したり調べたりしていくと、最終的に分からないラインが出て来てしまいますよね。例えば、どこまで何を食べていいのかとか
「そうですよね。その判断を下すはずの国が動いていないから、こういう状態なんだと思うんです。最終的な判断っていうのは、我々個人ではないと思うんですよ。それをまとめるのが国であり政府でありって言う話で。そこの判断が凄く曖昧な状態だし、国も曖昧だし、県も曖昧だしっていう状態なので。 “ここまでは安全です”って言ってくれれば、皆それに従うと思うんです。ところが上がったり下がったりしているから、どれが正しいのか分からなくなっている状態だと思うんですよ。ただでさえ疑う心を皆が持ってしまった状態だから、余計これを回復するのは難しいと思うんですけど。でも、そういうことをはっきり言ってもらわないと動きようがないってのも事実だと思います」